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平成24年度 研究報告書
平成24年度 5歳児・はと組 研究発表
テーマ 自然学習
 
◎はじめに
 
 5歳児になり行事や体験が今まで以上に幅広くなる中で、子どもたちには、様々なことに関心や興味を持ち、心豊かに過ごしてもらいたいと思いました。その中でも「自然」というものを日々の生活の中で大切にしていきたく、研究テーマに取り上げました。

  自然の中では、楽しむ、考える、学ぶことが無限に可能です。フェアリーキッズ(少人数での自然学習)やお散歩、菜園活動、お泊り保育、など様々な体験、また、そういった体験の中で採取した自然物を使った製作遊びを中心に、子どもたちの姿と成長過程を記録しました。

 観察視点として、「自然への親しみと思いやりを育む」「新しい知識(知恵)を知り、身につける」「発見を楽しみ、考え、生活に取り入れようとする」を重点的に捉え取り組んできました。全ては子どもたちの生きる力へと繋ることをねらいとしています。
 
第一期(4月〜7月)
 
≪子どもたちの様子≫
 期待を胸に進級した子どもたち。新入園児を一人迎え、クラス構成は4歳児の頃とほとんど変わらないこともあり、子どもたちも緊張や不安を感じることなく安心して保育園生活を楽しんでいる。
ただ、危機管理(自分にとって安全か安全でないかの気付き)が薄い。

≪第一期のねらい≫
・安全意識への意識を子どもたちが持つ。
・自然活動を楽しみながら、適切な知識を積み上げていく。
※写真をクリックすると拡大で見ることができます。
主な活動 活動内容 子どもの様子 保育士の配慮
5月
郊外保育(やきそば作りと自然散策)
広場で花を摘み、摘んだ花で指輪や指飾りを作る。
 
寝転んでゆったり過ごす。
図鑑で草花を調べる。
保育士の見えないところへも平気で行こうとする。
枝を折ろうとする。
何故危ないのかをその都度わかりやすく伝える。
子どもの発見や気づきに共感し遊びの幅が広がるような言葉を掛ける。
散歩で季節を感じながら草花を見つけ拾う。
拾った草花を持ち帰り押し花にする。
 
参観のランチョンマット製作の飾りとして押し花を使用する。
 
自分の気に入る花びらや葉っぱを拾い集めていた。押し花が完成すると色の変化、形の変化に驚いていた。
自分たちで拾ってきたもので、保護者と一緒に制作することで、より自然への親しみを持つ。
押し花の作り方を伝える。
押し花を製作で使用することも伝え、押し花になることを楽しみにして待てるようにする。
5月
郊外保育(田んぼでの泥んこ遊びと自然散策)
   
   
   
田んぼならではの泥の感触を味わいながら楽しむ。
 
 
前回の郊外保育で花で指輪を作ったことを思い出し花で指輪を作ろうとする。
カエルなどの生き物の鳴き声を聞いて探そうとする。
冷たくて、沈んでいくため怖がっている子もいたが、ほとんどの子が全身泥だらけになって遊んでいた。
時間がきても遊びをなかなかやめられない。
怪我なく遊べるよう子どもたちと一緒に約束を話あう。
かけっこや綱引きなど泥
の中で楽しめる遊びを提供する。
約束事を思い出せるようにしたり、次への活動に期待が持てるような言葉を掛ける。
5月

6月
第1回フェアリーキッズ(自然散策、採取、虫探し、木登りなど)
子ども10名弱、大人3〜4名で自然の中で遊びを楽しむ。
木登りをする
 
虫を探し、虫かごに入れて観察する。
前半グループ、後半グループ共に気持ちが高まっていた。初めのうちは危険な姿も見られるが保育士の言葉掛けにより危険の有無を確認して登り、降りる際も足の置き場をよく考えながら降りていく。
慣れてくると確認を忘れて登ろうとする。
時間、気持ちの切り替えができず、遊び続ける。
虫を持ち帰り草を入れたり、野菜の切れ端を入れて餌にする。
約束事はしっかり伝える。
無理のないように子どもたちの経験を尊重し見守る。
虫を持ち帰ってきたので、虫が住みやすい環境を子どもたちと考える。
子どもと同じ目線で一緒に考え新しく知れることを共感する。
約束事を思い出せるようにしたり、次への活動に期待が持てるような言葉を掛ける。
散歩
自然散策
フェアリーキッズとの区別ができずに木登りをしようとする。
不思議に思ったことや、名前のわからない草花、虫を発見したときは図鑑で調べようとする習慣がついてくる。
木登りをしていいのはどのようなときなのか確認し合う。
5月
から
7月
菜園活動(第五中学校の畑で夏野菜を育てる)
毎日交代で水やりをする。
雑草を抜く。
実った野菜を収穫し食べる。
水やりの順番が回ってくることを楽しみし、実った時は喜んで伝えに来る。
野菜よりも虫探しに関心を持っていた。
一緒に水やりをしながら収穫や世話を一緒に楽しむ。
収穫したものを食べられるように給食担当が調理する。
 
第一期の様子とそこから見る成長過程

自然への親しみ、(自然の中で楽しもうとする意欲)は子どもたちから十分に感じられるが、開放感や気分の高まりによって、大胆な行動や危ないことも度々見られた。
発見したこと、見たことに関して、聞いたり調べたりして解決しようとする姿が見られた。
虫や小動物が大好きで、保育室で飼おうとするが、飼育への興味まで広がっていない。
 
第二期(8月〜12月)
 
≪子どもたちの様子≫
 季節の開放感から危険な行動も見られるが、お泊り保育などの楽しみにしている行事が近づき身の回りのことをきめ細かに行おうとしたり、約束やルールを意識して行動しようとする。

≪ねらい≫
・約束やルールを守らなければ、危険であることを理解する。
・自然活動を親しみながら、適切な知識を積み上げていく。
※写真をクリックすると拡大で見ることができます。
主な活動 活動内容 子どもの様子 保育士の配慮
8月
お泊り保育(沢遊び・自然散策・野菜収穫)
沢遊び:沢にいる生き物を
探す。
 
 
野菜収穫は自分で選んで
収穫。
 

自然散策は主に虫探しに
なる。

 
水に触れることを喜び、気分が高まる。
カニや魚などを探し、観察して楽しむ。
野菜の収穫では、収穫する野菜を自分で選ぶとなると、子どもたちなりに「おいしそうなもの」「大きいもの」を慎重になって選ぶ。
捕まえた虫は自然に返すことを約束するが時間がきても返せなかったり、持ち帰りたいと言う。
水の中にいる時間、温度、気温を考え、遊ぶ時間を配慮する。
発見した喜びを共感する。
収穫した喜びを一緒に喜び合う。
捕まえた虫は自然に返してあげるよう事前に言葉を掛けておく。
9月

10月
第2回フェアリーキッズ
自然散策、採取、虫探し、木登り、絵画遊び
採取したドングリ、葉っぱ、枝などを画用紙に貼る。
 
木登り以外に自然物を使って遊ぼうとする。
葉っぱを動物の耳に見立てて、葉っぱを探しに行く。
虫探しをし、見つけた虫は虫かごに集め、持ち帰る。持ち帰った虫は飼い方や餌を調べる。
前回は危険の有無を確認せずに木登りをしようとしていたが今回は確認しながら遊ぶことができていた。
画用紙を用意し、自然物を貼り付けると模様に見えたり、絵になって楽しめることを伝える。
子どもたちが調べた虫の
環境を整えられるよう準備する。
芋ほり
芋ほり(芋の収穫・野菜畑見学・落花生収穫)
 
スコップで土を掘るが、掘りにくいと手で掘る。
芋が見えてくると喜び、さらに一生懸命に掘ろうとする。
畑に植わっている野菜の
名前を農園の方に教えてもらう。
畑に落花生が植わっている事に驚く。一人少しずつ収穫させてもらい、形や手触りを楽しむ。
子どもたちが掘りやすくなるよう一緒に楽しみながら掘る。
掘った芋を並べて、みんなで数え、収穫した喜びを実感できるようにする。
関心が深まるよう葉っぱ
の色や形など言葉にして伝える。
発見や喜びを共感する。
11月

12月
第3回フェアリーキッズ
自然散策、採取、虫探し、木登り、図鑑作り、製作(リースなど)
拾ってきた自然物の名前を調べたり、種類を調べ、図鑑を作る。
リースを作る
 
 
虫が少なくなってきていることに気が付く。
図鑑で調べて、名前を知ることができた時喜ぶ姿が見られた。
図鑑に載っていたリースを見て「これ作りたい」とすぐに材料探しに行く。
子どもが持ってきたツルを輪の形に作り、作り方を伝え、友達同士で教え合っていけるようにした。
図鑑を豊富に準備する。
発見した喜び、新しい事を知った嬉しさを共感する。
みかん狩り
みかん狩り(稲刈り後の田んぼで追いかけっこ)(水間公園での自然散策)
 
 
みかん農園でも事前に保育士と確認した危険な場所を覚え、近づかない。
稲刈りをした後の田んぼで追いかけっこをしたり、土の感触を感じながら楽しむ。
美味しく、気持ちよく食べられるための約束を守ろうとする。
枯れ葉を集め友達と相談して遊ぶ。
芝生の感触を楽しみながら遊ぼうとする。
ルールを守って過ごそうとする姿も見られた。
天候の変わり目に気付く。
みかん農園の方から約束事の説明があることを事前に伝え、話を聞けるように
する。
危険である場所、安全に遊べる場所を子どもたちに伝え、安全に楽しく遊べるようにする。
天気の移り変わりを考えながら遊ぶ場所の確保や危険でないかの確認を行う。
 
第二期の様子とそこから見る成長過程

お泊り保育を通して、身の回りのことを自分でしようとする意識も芽生え、また出来事により自信へ繋がる。
新しい事を図鑑で調べようと習慣づいてきた。
気の合う仲間で協力したり、誘い合って工夫して遊ぼうとする姿が多くなった。
慣れてきたことに対して乱雑になる。
 
第三期(12月〜3月)
 
≪子どもたちの様子≫
困っている時など友達を助けようとする姿が見られる。
様々な活動を通して、友達の良いところを、理解し合っている。しかし、慣れてきた安心感からか、安全確認を忘れたり、物の扱いが乱雑になっている。

≪ねらい≫
・創意工夫し、表現することの楽しさを知り十分に楽しむ。
・安全確認の必要を理解し、自主的に行う。
※写真をクリックすると拡大で見ることができます。
主な活動 活動内容 子どもの様子 保育士の配慮
12月
自然物を使った製作遊び。
松ぼっくり製作
(ツリー)
(擬人化)
フェアリーで拾ってきた松ぼっくを使用し、ビーズを乗せて、ツリーにする。
松ぼっくりの形や大きさを友達と比べていた。
松ぼっくりを擬人化し、作り上げることを楽しむ。
色鮮やかになるようビーズを用意する。
子どもの表現からできたものに感動し、飾るなどして子どもたちの表現を刺激する。
1月
第4回フェアリーキッズ
基地づくり(家づくり・木登り・自然散策・採取)
みんなで1つのことに取り組み、協力して楽しむ。
大きめの枝や、枯葉を集め家づくりをする。
前半グループは気持ちにばらつきがありうまく家づくりができなかったが、後半グループは声を掛けあっていろんな自然物を集め家を完成させることができた。
大好きな木登りを安全確認して登る。
良い材料になりそうなものを子どもたちに教え、どのように使うかは子どもたちの発想を見守る。
フェアリーキッズが最後であることを伝え、見通しと目的を持って遊べるようにする。
1月
自然物を使った製作遊び。
枝で雪の結晶
紙粘土に枝を刺し、枝と枝の間を毛糸で巻いていく。
 
枝は自分たちで長さを調節することが難しいようであったが、友達や保育士に相談しながら作ろうとしていた。
ある程度の長さに調節し、子どもたちが作りやすいよう配慮する。
2月
雪遊び
(ソリすべり・雪に触れる)
雪の上をソリで滑る。
ソリでは、足でブレーキすることが難しい子もいた。
雪だるまやかまくらは、友達と協力して共同の物を作ろうとする。
遊ぶ場所(範囲)を理解し、的確に遊んでいた。
楽しいあまりに遊びがなかなかやめられず、時間の兼ね合いが取れない。
ブレーキの声かけを行い、衝突のないように配慮する。
協力して1つのものを作る楽しさを感じられるように、周囲に呼びかけ、保育士も一緒に参加する。
遊びが広がるよう事前の環境を確認する。
 
第三期の様子とそこから見る成長過程

・子どもの様子を肯定的に認めることで自主的な安全確認に繋がっていった。
・個人の表現力を様々な行事を通して、仲間との共同作業を楽しめるようになった。
・いろんな事を持続して楽しめることが得意でない。
 
◎まとめ
 
 一期、二期、三期と子どもの様子を観察し、それぞれに目標、ねらいをもって活動に取り組むことにより、子どもたちの日々の成長を実感することができました。

 フェアリーキッズという活動があることにより、時間をゆったり使って自然の中で過ごすことができたと思います。ただ自然に触れて遊ぶというわけではなく、5歳児だからこそできる遊び方、自然とのふれあい方があると感じました。初めのうちは気分が高まり、危険な姿も見られていましたが、その都度の言葉かけや、回数を重ねるごとに理解も深まり安全確認の大切さを学んでいまいした。また、図鑑を見ながら道を歩きながら不思議に感じた際、草花、昆虫の名前を調べようし、また自分が知ったことを友達や保育士に知らせていました。フェアリーキッズで感じたことは、保育士が言葉掛けや遊びの提供を勉強しなければ、自然の中での遊び方、遊びの展開が工夫できず、遊びが浅くなってしまいます。初めからこちらが遊びを提供するのではなく、子どもたちの発想や表現を引き出すことが大切です。

 観察視点としてきた「自然への親しみ、思いやりを育む」は、自然のいろんな不思議や知らないことがたくさんあり、子どもたちにとってもわくわくする気持ちになっていました。思いやりを育む面では、最後のフェアリーキッズで「みんなで協力して一つのことをする」という目的を持って取り組む中で、相手のやり方、自分のやり方をうまく話し合い、助けあう姿から感じ取ることができました。

 「新しい知識や知恵を身につける」ということに関しては、季節により自然に変化がある事を知ったり、どんぐりは木になっていることを知らない子が多く、知った時には驚いていました。寒くなるにつれ、虫が減り「寒いから寝ているんだ」という子もいました。春に行った押し花も、一度取り組んでから、花びらを見つける度に「押し花にしようかな。」と自分たちでやってみようという姿も見られていました。

 「発見を楽しみ、考え、生活に取り入れようとする」ことは、発見を何でも言葉にして、周りの人と共感したり、捕まえた虫たちを少しの期間お部屋で飼っていました。一期では飼育までの興味を広げられなかった子どもたちでしたが二期に入り自主的に飼育の仕方や餌について調べている姿がありました。採取した草花、松ぼっくり、どんぐりを製作に取り入れ、自然を活かす楽しさも感じていたように思います。

 身近な動植物に親しみを持ち、いたわって、大切にしたり、作物を育てたり、味わうなどして、生命の尊さに気づくこともできました。今まで気付かなかった自然のありさまを、心と身体全体で感じることが子どもたちを大きく成長し、顔の表情や目の輝きにも変化が現れるのだと思いました。自然の中で様々な体験をすることで子どもたちは新たなものと出会い、発見しその不思議さに様々な感情を持ち、さらに新しい知識や知恵を身につけていくことで成長すると思いました。

 子どもたちが自然の中で充実した過ごし方、遊びができるために、これからも言葉掛けや、展開の方法、いろんな遊びを勉強していきたいと思います。