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平成25年度 研究報告書
平成25年度 3歳児・ひばり組 研究発表
テーマ 異年齢児交流
◎はじめに
 3歳児クラスは、異年齢児との交流を通して年上の子への憧れから、自分達でしようとする意欲、その育ちから自信に繋がり、年下の子に優しい気持ちが生まれ、見る角度を少し変える事から心の広がりと優しさが芽生えることを願い『異年齢児交流』をテーマにしました。
 1年をT期(4月〜7月)、U期(8月〜10月)、V期(11月〜3月)に分けて子ども達の様子や変化、成長などをまとめてみました。
第T期(4月〜7月)
取り組んだ内容
日常の保育の交流(朝夕の合同保育や散歩、園庭での自由遊びなど)を通しての異年齢児の関わり方を観察し、今後の課題と展開の着眼点を明確にする。
子どもの変化・様子
◎4月当初の姿
※写真をクリックすると拡大で見ることができます。
上靴の脱ぎ履き、シール帳のシール貼りなど、「できない」と初めての活動は自分でせず、保育士にしてもらおうとする姿が見られた。
園庭・室内での合同保育は、ほとんどの子どもが同じクラスの友達と遊んでいた。
新しい部屋では、廊下からかもめ組(4歳児クラス)やはと組(5歳児クラス)のお友達を見て過ごし、ルールなど少しずつ覚え模倣する姿も見られた。
◎5月チョイスデイ活動
初めてのチョイスデイ活動が十分把握できず、どの工房に行きたいかではなく、「はと工房がいい」「かもめのお部屋」など部屋で選んでいた。
つくり工房を選択した子ども達は、年上のお友達と一緒に製作し、優しく教えてもらう姿が見られた。
レストランでは、配膳や片付けの仕方など、はと組・かもめ組のお友達の様子を観察し、少し不安そうであったが、お兄さん、お姉さんが優しく教えてくれることもあり、子ども達は安らぎを感じているようであった。
◎6月つばめ組(2歳児クラス)と散歩
お散歩ではタンポポの綿毛を見せてあげたり、草を取って「どうぞ」と手渡すなど優しく接する姿が見られるようになってきた。
第U期(8月〜10月)
取り組んだ内容
ファミリー活動では、ひばり・かもめ・はと組でクラスを3つに分け縦割り保育(異年齢児シブリング)を行なう。
年中児や年長児と一日を共に過ごすることで生活や遊び等を教えてもらうことへの安心感から、自分もやってみたいという憧れから意欲を育み、一人ひとりの成長となるように配慮した。
ファミリー活動・郊外保育・他クラスとの交流 等
子どもの様子・変化
◎ファミリー活動
<ファミリー活動当初>
はと組、かもめ組の保育室へ移動した子ども達は、お兄さんお姉さんのお部屋で過ごせることを喜び、嬉しそうにしていた。憧れのお友達と一緒にいられることにウキウキしている様子も見られた。しかし、中には担任やお友達、環境が変わったことが不安になり泣いてしまう子どももいた。
お兄さん、お姉さんの姿を見て、自分達も同じようにしたい、出来るという思いが強まる。
午睡後の布団の片付け・身の回りの整理整頓
歌・話を聞く姿勢・挨拶 等
<ファミリー活動後>
ファミリー活動前まではクラスのお友達と遊ぶことが多かったが、ファミリー活動中や活動後には上のクラスの遊びの輪の中に入れてもらい一緒に遊び楽しむ姿が見られた。ひばり組だけではまだ少し難しい遊びも、かもめ組、はと組のお友だちが優しく教えてくれることで、遊びの幅も広がっていた。
ひばり組同士では、玩具の取り合い、順番争い等の日常でのトラブルが多々あったが、譲ってもらえたり、同じクラスの子の時のように闘争心が強く出ることはなく、少し落ち着いて行動することが出来ていたので、トラブルも少なかった。
率先してお手伝いをする子が増え、日常のクラスでは見られない子どもの一面を発見することもあった。「こんなこともできるんだ」という子どもの自信や成長を保育士があらためて認識することが出来た。
◎郊外保育(2歳児との蜻蛉池公園)
今までは、かもめ組、はと組のお友達に教えてもらう、手伝ってもらうなどの「〜してもらう」が多かったひばり組であったが、今回の郊外保育では、自分達がお兄さん、お姉さんになって「〜してあげる」の立場になって参加した。
年上の立場になるというのは嬉しい様で、かっこいいお手本になろうと気合は十分であった。手をつなぐとき、歩くときなど、しっかりと手を引く頼もしい姿が見られた。
かもめ・はと組とのお散歩のときは、道の内側を歩いていたが、今回の郊外保育は車道側を歩き、お兄さん、お姉さんという意識を持って自然に歩くことが出来ていた。
広場ではどんぐり拾いや散策などをして過ごした。個々で遊ぶ姿が多く見られたが、そんな中でも山の登り降りを少し不安そうにしている子がいれば安心できるようにと手を繋いであげ、また、転んでしまった友達には顔を覗きこんで優しく声をかけて心配する姿が見られた。
年上のお友達から教わった優しさや思いやりの様に年下のお友達にも自然に優しく接することができ、思いやりの気持ちが育まれている姿が見られた。
◎他クラスとの交流
小さいクラスのお友達との関わりも増え、園庭遊びでは、一緒にむっくりくまさんや、わらべ歌、おままごと遊びを楽しむ姿が見られた。遊びのルールを伝え、遊びの提案をしながら進めていくこともあった。膝を曲げて目線を合わせて話をする姿も見られるようになった。
保育室では、絵本を一緒に見ながらお話をしている姿に、子どもの成長を改めて認識することが出来た。
年齢にとらわれずに日常生活の中で知っていることは、教え合い、困っている友達には思いやる気持ちが少しずつ芽生えているようであった。
第V期(11月〜3月)
取り組んだ内容
V期では、他のクラスとの日常からの異年齢児交流と共に、クラス(同学年)での関わりや関係性などにも視点をおいて個々の成長を観察する。
チョイスデイ・ミュージックフェア・かもめ組との交流
はと組との交流・つばめ組との交流・園庭、室内での合同保育 等
子どもの変化・様子
◎チョイスデイの様子
自分で行きたい工房を決めると共に、仲の良い友達と「つくり工房にしようよ」等相談して決める姿も見られ、友達に合わせようとする様子も伺えた。
それぞれの工房でかもめ組はと組のお友達との関わりが多く、チョイスデイが終わった後も「楽しかったな」と余韻に浸り、こんなことして遊んだと嬉しそうに話す姿が見られた。




つくり工房では、のりやはさみを使う場面もあり、自分でしようとする子どもの姿も見られたが、「難しい?やったろか?」と優しい言葉と共にお兄さんお姉さんが手伝ってくれ、ひばり組の子どもも嬉しそうにする温かい様子も伺えた。  
チョイスデイを通して、いつもしている製作遊びよりも一歩進んだものをお兄さんお姉さんと出来ることが子どもにとっての喜びとなり、「こんなん作れたで」と話す子どもの表情からは、自信を持ち、達成感に満ち溢れた様子が伺えた。
◎つばめ組との交流
海岸沿いやシェルシアターに出掛ける回数を重ねる度に、優しく「こっちやで」「今日は遠くまで行くんやで」などの言葉掛けが多くなった。また、会話を楽しみながら手を引く姿が見られるようになった。その際は、自分達の方がお兄さん、お姉さんだという自覚と共に、頼もしいひばり組の子ども達であった。
◎かもめ組との交流
園庭でのしっぽ取りや、室内での椅子取りゲームなどの遊びや散歩を通して沢山の関わりがあった。関わりの中では、ひばり組の子どもが安心して、また、頼っている姿が多々見られた。
優しく関わってくれるかもめ組と遊んだり、ピアニカを吹いている姿を見たりして、かもめ組になることへの期待や憧れが増している様子も伺えた。子ども自身からも「次、かもめさんになるんやろ?」「ピアニカやりたいな」等の言葉が聞こえた。
◎はと組との交流
はと組の午睡後の手伝いでは、お兄さんお姉さんが来てくれることに喜びを感じ、中々起きることが出来ない子どもや、衣服の着脱が難しい子どもなどもすぐに起き、一緒に着替えを手伝ってもらう姿が見られた。
布団運びや、着替え等、普段自分で出来る身の周りの事を「やって」と甘える姿も見られた。しっかりしていて頼りになるお兄さんお姉さんを頼り、信頼している子ども達であった。このことが自分達も年下のお友達に優しくしようと思え、自信を持って関わることが出来、今後の異年齢児との関わりに繋がるものである。そして、その時の子どもの心情は穏やかである様子が伺えた。
その他に、靴を履く際やジャンパーを着る際に難しそうにしているひばり組の子どもを見つけると、さっと駆け寄り「やったろか?」「かしてみ」と言葉を掛けて手伝ってくれるはと組、かもめ組の子ども達の姿もよく見られた。
◎まとめ
 異年齢児交流は、子ども達にとって戸惑うこと以上に喜びや楽しさを味わう活動となっていた。日常のクラスでは見られない子どもの一面を発見し、子どもの成長を保育士自身が改めて知ることが出来るものでもあった。

 様々な異年齢児交流を通して、子ども自身が少しずつ成長する姿が見られた。

 異年齢児との関わりの中では、自分の思いを通したい気持ちや上手く関わることが出来ない場面も見られたが、遊びなどを通して大きいクラスの子どもに憧れを持ち、挑戦しようとする意欲的な姿が見られ、小さいクラスの子どもには、思いやりを持ち優しい言葉掛けと共に関わる姿が見られた。また、年齢が違い、出来ることも違うが、どのような遊びにおいても全力で楽しむ姿が多々見られた。 同学年の子ども同士も、分からないことがあると教え合い、困っている友達には思いやりを持ち関わることが自然と出来るようになっており、このことも子ども自身の大きな成長であると思う。

 異年齢児交流は自分が大切にされて、初めて優しい気持ちが育ち、子どもにとって成長に繋がる大切なものであり、人と関わる力を育てていくものである。 一人ひとり、考えることや出来ることなどは違うが、子どもの個性を大切にし、人との関わりの中での子どもの様々な感情、表現などしっかり受け止め、これからも人と関わる力を育んでいきたいと思う。