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楽しい遊び
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平成22年度 研究報告書
平成22年度 0歳児・あひる組 研究発表
テーマ 『環境 〜わらべ歌・手作り玩具〜』
 
◎はじめに
 
 0歳児が初めて母親の前から離れ、見も知らぬ環境、見慣れぬ人と出会う保育園への入園は、この世に生を受けて数カ月の赤ちゃんにとっては、大変ショックなことだと思われます。
 4月の乳児クラスは、火のついたように泣く赤ちゃんの泣き声が響きわたっています。保育園に送ってきた保護者の方もその声にたじろぎ、不安で仕方のない様子が伺えます。産休明けで仕事復帰される母親にとっても、入園が決まりほっとしている半面、落ち着いて仕事も手に付かないほど心を痛めている姿が目に見えてわかりました。

 乳児クラスの担任として欠かせないことは、まず、保護者の方に安心していただくことです。保護者の方の安定が、お子様の安定につながるのです。
 保護者の方が安心・安定できる一番の要因は、子ども達が一日でも早く慣れて、笑顔で安心して登園できることだと思われます。

 子ども達が笑顔で安心できるには何が必要なのか、何が大切なのか。
 昨年の保育で取り入れ、良い成果が表れた『ふれあい・歌遊び』を今年度も取り入れることにしました。なかでも、『わらべうた』を中心にすすめていくことにし、同時に気持ちよく毎日を過ごせるよう『環境』にも力を入れることで、子ども達との信頼関係を深めようと、研究課題にすることに決めました。

以下に、日々の様子を記しました。

 
◎わらべうた
 
  主なわらべうた
4月   ・いっぽんばしこちょこちょ
・せんべいやけた
  ・いないいないばあ
5月   ・ももやももや
・ここはてっくび
  ・ちゅちゅこっことまれ
6月   ・うえからしたから
・おでこさんをまいて
  ・てるてるぼうず
7月   ・どんぶかっか   ・おふねはぎっちらこ
8月   ・あがりめさがりめ   ・あんよはじょうず
9月   ・おすわりやす   ・いちじくにんじん
10月   ・にんどころ   ・いもむしごろごろ
11月   ・あのこどこのこ   ・いたいのとんでいけ
12月   ・だるまさん   ・げんこつやまのたぬきさん
1月   ・ぜんぜがのんの   ・なべなべそこぬけ
2月   ・ちょちちょちあわわ   ・いっぴきちゅう
3月   ・たけのこがはえた
・せんたくごっこ
  ・ちゃちゃつぼちゃつぼ
 
*『わらべうた』の他に手遊びや、うた遊びを取り入れています
*月に分けていますが、繰り返し歌っています
*毎月のクラスだよりに楽譜つきで掲載しました
*保育参加参観、おおぞらウイークで紹介しながら実施しました
 
 4月の入園当初、私達が歌をうたうことで気をつけたことがあります。『やさしい声』『一対一で子どもに触れながら』『表情歌かに楽しさを伝えるように』ということです。

 泣いてばかりの子ども達を、抱きしめたり、おんぶしながら歌をうたうと、不思議と泣き止み、耳を傾けてくれました。子どもに触れながら、優しくうたう歌は子どもの耳に心地よく届くようです。この働きかけに子ども達はご機嫌なサインを体や声で返してくれるようになりました。

 『歌』を選ぶことも大切と考え、ユーモラスな言い回しが楽しい『わらべうた』を多く活用しました。単調で繰り返しのリズムが親しみを感じ、安心できて覚えやすいようでした。歌いだすと、何の歌なのかがわかり、期待して待つようになり、うたい終えると、満足そうに笑います。そして、『次は何の歌をうたってくれるの?もっと歌って』と言いたげに私達の顔を覗き込むようになりました。

 また、大きくなり、言葉を発するようになると、「もう一回」と、歌を催促し、友達同士で手をつなぎ、「なべなべ」「ぎっちらこ」の仕草を行ったり、「こいこいこい」と歌いながら布をひっぱりだすまでになりました。大人との一対一の関係から、子ども達の関心はまわりにいるお友達へと向いていきました。
 わらべうたの中でも、布遊びが人気で、布を見ると喜び、期待して待っています。柔らかな布が安心感を誘い、歌にあわせて布を揺すると、声をだして笑います。後半になると、友達同士で布を揺すったり、布に人形を乗せてひっぱるなど、私達が驚くほどの光景を目にすることができました。子どもが育つ場に『歌』は欠かせない遊びの一つです。『歌』が子ども達との信頼関係を生みだすものだと言っても過言ではないと思います。
 
*後半、子ども達同士で、わらべうた遊びを楽しんでいる様子です。
   
 
   
 
 0歳児は、横に寝ているだけの姿勢から、寝返りができ、お座りができ、立って歩くというように、成長・発達の著しいクラスです。

 一生の中で、一番大切な時期に関わる重大性を受け止めながら保育に努めてまいりました。
それぞれの姿勢で遊ぶ時に、興味のもてる、魅力ある玩具があれば「○○を触りたい」と気持ちが向かい、自らの運動能力を獲得することになり、それを理解して応援してくれる大人がいることで意欲を高めることにつながるのだと思われます。

 『歌』も、子ども達の成長に欠かせない一つですが、親しみを感じ、安心できる大人がいるかいないかで変わってくると思われます。
親しみを感じ安心できる環境にいられることが、子ども達の育ちに欠かせないことです。
 赤ちゃんは、人と人とのかかわりの中で育ちます。
家庭でいる時間より保育園で過ごす時が多くなっているのが現状です。
私達保育士は、子ども達にとって、安心できる存在でなければならず、役割は大きいです。

 乳児保育に関わる保育士としての質の向上に努めなければならないと改めて感じました。
 
◎季節感が感じられるお部屋作り
 
 おむつ代に寝転ばせると、不安になって泣いてしまう子どもがいた。おむつ交換台の上にモビールを飾る。

〜春〜(写:春)
春が感じられる小鳥を作り、羽の部分には子どもたちの手形を貼る。
まだ製作が出来ない子どもたちの作品にもなり、お部屋も春らしく彩られる。

〜夏〜(写:夏)
流れ星を飾り足形を貼り付ける。

〜秋〜(写:秋)
手形をもみじに見立て、お散歩で拾ってきた枯葉をラミネートし交互に飾る。

〜冬〜(写:冬)
子どもたちも成長し製作が出来るようになってきたので、タンポで雪だるまを描き、目や口をシール貼りをした。

 四季折々のモビールを飾ることで、季節を感じることができる。
 おむつ台の上に飾ることで、おむつ台に寝転ぶと泣いていた子どももモビールを見て泣き止む。泣かない子も指差しをして教えてくれる。保護者の方も送迎時「自分の子どもの手形はどれだろう」と見てくれたり、冬に作った雪だるまのモビールでは個性が出た子どもたちの作品を見て「こんなことができるようになったんだ」と嬉しそうに話をしてくれた。

 
◎手作り玩具
 
 子どもたちにとって玩具は発達を助けてくれる大切なもので、子どもたちが豊かに育っていく環境の中に必要とされる一つである。
 
「音が鳴る玩具」… ヤクルトの空き容器に大き目のビーズを入れテープでふたをする
ペットボトルに鈴と切った色紙をいれ、棒をつけて持ちやすくする(写:玩具1)

 目が見えるようになってくると、音のするほうに反応し目で探すようになる。大人が声をかけながら音の出る玩具を振ってあげるといったコミュニケーションが大きな意義を持つのである。
* ヤクルトの容器は子どもたちの小さな手で丁度握りやすくなっているところが遊びやすくなっていると感じた。
 
感触を楽しむ玩具」… 靴下の中にスーパーの袋を入れ、可愛らしく顔をつける(写:玩具2)
指先を使って握る力をつけ、感触遊びを楽しむ。
* あずき、綿、広告、ビニール袋など中に入れるものを変えて、いろんな種類の感触を楽しむことも出来る。
 
 「音が鳴り、つまんで引っ張る玩具」
サランラップの芯に穴を開けて紐を通す。中にはビーズ入れ降ると音が鳴る(写:玩具3)

 指先を使った知育玩具になる。
見て真似をすることが上手になってきた子どもたちに保育士が、
つまんで引っ張る姿を見せると同じようにしようとする。

 
「見て遊ぶ玩具」… 牛乳パックに「いないいない」をしている場面と「ばあ」をしている絵を貼り開けたり、閉じたりしていないいなば遊びを楽しむ(写:玩具4)
* どんな子どもたちも、いないいないばあ遊び大好きで絵本やこのような玩具で、見て楽しむことから入り、大人や友達同士で実際にやり取りを楽しむ遊びへと発展する。
 
「マラカス」… ペットボトルにシールを貼り、どんぐりを中に入れる。
* 子どもたちがシールを貼り、どんぐりを自分の指先でつまんで入れて作った。自分たちで作った喜びを表すかのように、振って音を感じながら遊んでいた。
 
 手作り玩具には温かみがあり、子どもたちの発達や遊びやすさを考えて工夫することが出来る。部屋の環境づくりと同様に、最後には子どもたちが自分たちで作ったものを環境につなげることが出来ている。見たり、聞いたり、触れることしかできなかった子どもたちが月日と共に成長し、指先を使ってシールを貼り、どんぐりをつまみ、マラカス製作に取り組めた。出来上がったマラカスを振ってうたに合わせて踊る姿は満足感で一杯だった。

 手作り玩具は数に限りあった為、普段は手の届かない場所に保管していた。すると子どもたちは「あのおもちゃであそびたい」と指差しをして訴えるようになる。

 「音が鳴り、つまんで引っ張る玩具」では、初め振ったり舐めたりしていたが、模倣が上手になった子どもたちに紐を引っ張って遊ぶ姿を見せると、真似て上手に引っ張れるようになる。

 このように手作り玩具で発達の手助けや、月齢によって遊び方が違ったりする姿をそばでみていると一人ひとりの成長が著しいと強く感じることができた。
 
*四季折々のモビール*
(写:春)   (写:夏)   (写:秋)   (写:冬)
     
     
 
*手作り玩具*
   
(写:玩具1)   (写:玩具2)   (写:玩具3)
 
(写:玩具4)
 
 子どもたちは見たもの、触れたもの、感じたものをそのまま吸収し取り入れる。大人が子どもに必要な環境を選択して整えてあげることが大切である。

 大人がゆったりと一人ひとりの子どもたちと向き合ってわらべうたで遊ぶことで嬉しい気持ちや楽しい気持ちなど心地良い感情を共有したり、もっとやりたい意欲を育てたりしながら大人との信頼関係を深めていくことが重要だと考える。歌いやすく、親しみやすいメロディを持っている為、子どもたちに自然な発声を促せる。

 喜び、満足感、信頼感、協調性など身に付け、心を育てていけるような保育を目指したい。