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平成23年度 研究報告書
平成23年度 5歳児・はと組 研究発表
テーマ マット運動「三点倒立」
 
◎はじめに
乳幼児期から今に至るまでに、保育を通してさまざまな運動遊びに取り組んできている子ども達。 とくに4歳児からはげんき工房が始まり、また研究課題としてもマット遊びを取り上げ、マット運動に力を入れて取り組んできたクラスでもある。
5歳児で取り組むげんき工房(年間9回予定)では最終目標が「三点倒立」となっている。
最終目標である「三点倒立」につなげるためには、どのような運動(遊び)を取り入れていく事で完成に近づくのかを5歳児の研究課題として取り組み始めた。
就学前の子ども達ということも踏まえて、運動面での成長だけでなく、集団活動をしていく中で必要となることを身につけていけるようにも配慮し、 げんき工房とマット遊びを活動に取り入れた。
げんき工房とは:
体育指導員による体育活動に並び、三点倒立を最終目標として、体力づくり・身体能力のスキルアップを育むもの。
最終目標が何故三点倒立なのか:
バランス感覚・筋力・集中力などが必要となる三点倒立就学前の子ども達だからこそ取り組める活動であり、1つの目標に向って取り組む事の大切さを学ぶ。
 
一年間の取り組み
 
  <げんき工房> <マット遊び>
前期 5月17日
6月28日
7月11日
 
中期 8月30日

10月13日

9月22日
10月25日
後期 1月18日
2月14日
2月 2日
   
観察視点
 
a:保育士の話(説明)をしっかりと聞く
b:集団活動として、約束・ルールを守る
c:他児とのかかわり方


就学に向けて集中力をつける
就学に向けて規律を守る
協調性を身につける
   
前期 (4〜7月)
 
目標:壁倒立
取り組み回数:げんき工房 3回 ・ マット遊び 0回
げんき工房活動内容:
 
@ 二人組での回転
L字ゆりかご
前転
開脚前転
A 二人組での回転
L字ゆりかご
L字ゆりかごから立つ
四足歩行(下向き)
四足歩行トンネルくぐり抜け
ブリッジ
壁倒立
B L字ゆりかごから立つ
首倒立
四足歩行トンネルくぐり抜け
腹ばいゆりかご
四足歩行(上向き)
ブリッジ(皿のせ)
壁倒立
 
げんき工房子どもの様子:
 
久しぶりのげんき工房、はと組になって初めてのげんき工房という事で、子ども達の気分も高まっていた。
活動に入る前に活動目的、目標や約束など伝えるとさらに意欲も高まり、早く取り組みたい様子だった。
4歳クラス時より前転はほぼ完成に近いが、開脚前転は期間が空いたため、未完成の子どももいた。
今回開脚前転は重要視せず、遊びながら楽しく筋力をつけていけるよう取り組んでいく。
二人組での回転では、好きな子とペアになり並んで待とうとする。
2回目からは人数の都合上ペアが変わっていくよう伝えるが、気の合うペアを見つけ取り組んでいた。
相手のペースに合わせて一緒に回ることや、個々に回転する楽しさ・感覚を体験していた。
二人組での回転やL字ゆりかごは、どのようにしたらできるか。そして、できている子の動きを観察して真似するという事を取り入れて促していった。
2回目の取り組みの時には上手に回れる子が増える。
L字ゆりかごは、初めての動きのため体の勢いやバランスを上手く利用して起き上がる事が難しかった。
前期最後には、保育士の声かけにより、全員でタイミングをそろえて起き上がる事もできるようになる。
四足歩行トンネルくぐり抜けでは、筋力もついていないため同じ状態をキープしておく事が難しい。
 
 
(7月)
  ※お腹を下げてしまい、他児が通りにくい状態になる。
 
ブリッジは、手・足の位置や体の持ち上げ方から伝えるが、思うように頭やお腹を上げられずバランスがとりにくい子と、 すぐにコツをつかみお腹にお皿をのせて出来る子がいた。
中には、体操を習っている子を中心にすぐにコツをつかみ、お腹にお皿をのせてできる子もいた。
個々にできることをみんなの前でやる事で自信をつけ、さらに意欲的に取り組むことができるようになる。
壁倒立は、マットに頭と手を置く位置の3点をテープで印をつけ、わかりやすくする。
はじめは戸惑いを見せる子もいたが、手の平を開くことや頭頂をマットにつけることなど、ポイントを丁寧に伝えて補助することで、怖がることなく床を蹴り、 取り組んでいた。
壁倒立は一度に2名しかできないため、待っている間に前転など他の事に取り組むが、初めて取り組む壁倒立が気になり、他の事に集中して取り組めなかった。
そのため2回目からは並んで待ち、他児の姿を見るという時間を設けた。
前期まとめ
 
a: 毎回マット運動に意欲を示し、活動を楽しみにしながら保育士の話を聞いていたが、活動が始まると気分が高まり、話を聞く事よりも身体を動かすことを好んでいた。
b: 壁倒立を順番に行うため、待つ時間があった。
c: 運動面では初めての運動もあったが、個々に楽しんで取り組む事ができていた。また、上手にできている子を見て真似をしようとする意欲的な姿も見られた。
   
中期(8〜10月)
 
目標:補助付き三点倒立
取り組み回数:げんき工房 2回・マット遊び 2回
げんき工房活動内容:
 
@ 首倒立
四足歩行トンネルくぐり抜け
腹ばいゆりかご
ブリッジ(皿のせ)
壁倒立
補助付き三点倒立
A 首倒立
首倒立から立つ
四足歩行トンネルくぐり抜け
ブリッジ(皿のせ)
ブリッジ歩行
壁倒立
補助付き三点倒立
   
 
げんき工房子どもの様子:
首倒立は、手で腰を支えるというイメージが難しく、8月の時点では腰を支えて持ち上げるのではなく、足を上げて形から真似していこうとする。
 
 
(10月)
  ※手で腰を支えられるようになる
 
四足歩行トンネルくぐり抜けは、形をしっかりと覚えてきたため2グループに分かれて競争形式を取り、ルールを守る中で楽しく筋力をつける事ができた。
ブリッジは、手と足の位置を覚え、体を頭で支え持ち上げようする。
 
 
(10月)
  ※頭で支え、足の裏を全て付けて体を持ち上げようとしている。
 
ブリッジだけに限らず、完成に近づいてきている子を見ることが良い刺激となり意欲的に取り組む事ができる。
半数の子が一人で壁倒立をできるようになり、形が身についてくる。(10秒間キープを目標をとして行う)
 
 

(8月)

(8月)
  ※壁倒立の流れ
 
補助付き三点倒立は、マットを蹴る力の加減が難しく、勢いをつけすぎてしまったり、壁がない恐怖心から蹴る力が弱くなってしまったりと双方の姿が見られる。
腰や足を支えることで数秒間キープできるようになり、バランスを取れているときには一人で三点倒立をできる子もいる。
 
げんき工房活動内容:
 
@ 二人組での回転
ライオンジャンプ
前転
L字ゆりかご
四足歩行トンネルくぐり抜け
壁倒立
補助付き三点倒立
A L字ゆりかご〜直立
ブリッジ(皿のせ)
首倒立
四足歩行トンネルくぐり抜け
壁倒立
補助付き三点倒立
   
  マット遊び子どもの様子:
 
 
自分の体をしっかりと支えられるように、全身の筋力アップのためにライオンジャンプ、側転などげんき工房では取り組んでいない遊びを取り入れていく。
マット運動に慣れ上手に取り組んでいる反面、自己流で取り組もうとする姿も見られてきている。
四足歩行トンネルくぐり抜けは、競争すると伝えるとやる気満々になっていた。
ルールをしっかりと守り、また勝ち負けをきちんと受け入れ、他児と共感する事ができる。
壁倒立は全員が一人でできるようになり、三点倒立もバランスをとれる時間が少しずつ長くなる。
他児の姿と自分の姿を比べるようになり、他児を見て真似てみたり、応援したりする姿も見られるようになる。
  中期まとめ
 
 
a: 中期になると声かけにより切り替えがスムーズになり、聞いたことを行動に移して取り組めていた。また、困っている子に対して教えてあげ、助ける姿も見られてきた。
b・c: 他児にも関心を持ち始め、真似をして頑張ろうとする姿が見られた。そのため、並んで待っている際も少しずつ他児の活動(壁倒立など)を見られるようになり、 グループごとに整列し順番を守って取り組んでいた。楽しんで取り組む中で、集団として約束・ルールを守れるようになってきた。
   
後期(11〜3月)
 
目標:三点倒立
取り組み回数:げんき工房 2回・マット遊び 1回
げんき工房活動内容:
 
@ L字ゆりかご
直立〜首倒立〜直立
四足歩行トンネルくぐり抜け
手押し車
ブリッジ(皿のせ)
ブリッジ歩行
壁倒立
三点倒立
A 直立〜首倒立〜直立
四足歩行
四足歩行トンネルくぐり抜け
手押し車
ブリッジ(皿のせ)
ブリッジ歩行
壁倒立
三点倒立
   
 
げんき工房子どもの様子:
L字ゆりかごや直立〜首倒立〜直立は、体の反動を上手く使えるようになり、スムーズに行う。
首倒立を苦手としていた子も、バランスのとり方を徐々に身につけ、少し補助することで安定するようになる。
四足歩行トンネルくぐり抜けは、“競争に勝つためには”“早く全員終わらすためには”と考えるようになり、トンネル側とくぐる側それぞれが協力するようになり、互いに声をかける姿も見られた。
競争に夢中になり、他児と決めた約束を忘れがちになることもあったが、それに気付き互いに注意し合い守って取り組む。
 
 
 
  ※ルールを守って、協力する姿が見られる。
 
壁倒立は、全員が10秒間キープに成功する
 
 
  ※三点倒立の流れ
 
@ L字ゆりかご
L字ゆりかご〜直立
かえるの足うち
四足歩行トンネルくぐり抜け ブリッジ(皿のせ)
壁倒立
三点倒立
芋ほりゲーム
       
マット遊び活動内容:
 
新しい運動を楽しんで意欲的に取り組み、自分の姿を見てもらうため保育士や友達に声をかけ見せ合う姿も見られる。
それぞれの運動を行う前に声かけをすると、子ども達が率先して場所を移動したり、順番を決めたりと自主的に動き、取り組む姿も見られるようになる。
三点倒立は、腕の力を利用して支えようとしているため、少し補助することで、三点倒立の姿勢が保てるようになる。
四足歩行トンネルくぐり抜けや芋ほりゲームなどの競争は楽しく取り組んでいる中でも、しっかりとルールが身についてきているため、守って取り組むことができていた。
後期視点まとめ
 
a: 中期に引き続き“切り替える”ということができるようになり、また次の活動へ移る際に、話を聞く必要があることを理解し、取り組めていた。
b: 活動への慣れから気の緩みが見られる部分もあったが、子ども達と善悪を確認する場を設けることで再度取り組むことができる。
また、楽しんで取り組むだけでなく1つ1つ丁寧に行う大切さを知り、もう一度ルールを確認して集団として取り組む事ができる。
c: 他児が成功すると共に喜んだり、応援したりする姿が見られるようになる。
   
○まとめ
  一年間を通してげんき工房・マット運動に取り組み、
 
a: 保育士の話(説明)をしっかりと聞く
b: 集団活動として約束・ルールを守る
c: 他児とのかかわり方
  の3つの視点を意識してきた。げんき工房の時のみ、これらの事を注意して行うのではなく、毎日の活動の中でも身につけられるよう、またげんき工房の時には、運動遊びをしながらもこれらの事が身につけられるのか観察してきた。
たとえば、はじめに簡単な動き「L字ゆりかご」を身につけると、首倒立に発展し、それから直立〜首倒立〜直立の動きができるようになり、最終的に手をつかずにきれいに前転を完成させる事ができた。(壁倒立から、補助付き三点倒立をし、三点倒立へ取り組むことも同じである。)
これらのように運動にはどれも段階があり、段階を踏んでクリアしていく事でできるようになる。という事が改めてよくわかった。
就学前の子ども達と、これらの事を意識して取り組む事で成長が大きく見られた。1つの事に取り組むに当たって、達成するためにはどのようにしたらよいか。
ということを保育士だけでなく、年長児だからこそ子ども達と一緒に考え行動していく事が大切だと改めて感じた一年間だった。
   
  ※観察視点からのまとめ
 
a: 活動に取り組むにあたって、話(説明)を聞き理解し行動に移せるようにその都度丁寧に伝えていく。
話を聞けるようになったことで、活動への取り組みがスムーズになり、子ども達の理解力が高まり、行動へ移すまでの時間も早くなり、集中力がついた。
b: 気の合う友達と好きな遊びを自由に行うという形がメインだった子ども達だが、みんなで一つの遊びをする楽しさを感じられるようになると、互いに注意したり、
教えあったりする姿が見られるようになり、ルールを守って過ごす楽しさ・大切さを知るようになった。
c: 気の合う友達と遊ぶことを楽しみ、4月当初より他児との関わりは多く見られていた。
目標を達成するにあたって、必要なことを子ども達自身で考えて取り組んでいく中で、“他児と協力する”“他児を真似する”など一人ではできないことに気付き始めた。
それらを通して、他児との協調性・社会性を身につけてきた。