HOM ≫研究発表・H28≪ひよこ・1歳児≫
楽しい遊び
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平成28年度研究記録・・・
平成28年度 ひよこ組・1歳児 研究発表
テーマ 『ことば遊びから広がる心の響き』
〇はじめに
子どもたちの≪言葉の世界≫を広げたいと思い、この研究テーマをあげた。
 
〇年間計画
絵本 遊び
4月 「だるまさんが」など 歌遊び
5月 「こっちんとてん」 ふれあい遊び
6月 「どうぶつ こんにちは」 パペット遊び
7月 「がたんごとん ざぶんざぶん」 絵カード
8月 「みっこちゃん」 歌遊び
9月 「おててがでたよ」 ふれあい遊び
10月 「パンツのはきかた」 パペット遊び
11月 「きゅきゅきゅ」 絵カード
12月 「あーそーぼ」 歌遊び
1月 「ありがとう どういたしまして」 ふれあい遊び
2月 「おおきい ちいさい」 パペット遊び
3月 「ももんちゃんのかくれんぼ」 絵カード
 
〇子どもの様子
<4月>
・絵本
「だるまさんが」:かがくいひろし 作
「いないいないばあ」:きむらゆういち
「もこもこ」:たにかわしゅんたろう 作 もとながさだまさ 絵


3冊の絵本を取り入れた。それぞれの絵本に興味を持ち、集中して見ていた。動物などが出てくると、指をさして保育士に知らせ、嬉しそうに笑っていた。
特に「だるまさんが」のお話が大好きで何度も読んだ。お部屋に飾っていると「読んで」と言わんばかりに「あっ、あっ、」と絵本を指さしてアピールしていた。
お話に出てくる「どてっ」や「ぷしゅー」といった場面では、体を使って動きを真似していて、子ども同士笑い合うなど微笑ましい姿が見られた。
 
・歌遊び
「ちょうちょ」や「チューリップ」など季節の歌を中心に取り入れた。親しみのある歌で子どもたちも歌いやすく、体を揺らしながら遊ぶ。まだ発語がはっきりしておらず、保育士を真似て語尾だけを合わせて歌うといった様子である。低月齢児は体でリズムを感じて笑顔であった。
歌の絵本を見ながら歌う事で、視覚と聴覚から歌のイメージに繋げる事が出来た。
何度か繰り返して歌うと絵本に出てくる花を見て保育士に「さいた」と歌詞を言い、同じだという事を訴える姿も見られた。
<5月>
・絵本
「こっちんとてん」:かたやまけん 作

スプーンや時計が「こっこっこ〜こっちん」「ちっくちっく〜じゃららら〜」など、とそれぞれに合った擬音と共にリズムよく倒れていく楽しい絵本である。スプーンや時計が倒れるたびに一緒になって倒れて喜ぶ子どもたちであった。会話は難しいが同じ空間で同じように過ごす事に楽しさを感じ、また繰り返す擬音語に言葉の響きの面白さを感じている様子であった。
 
・ふれあい遊び
「針に糸をとおして」「きゅうりができた」など保育士と子どもと一対一で楽しめる遊びを中心に取り入れた。新入園児の子どもたちも保育士とゆったり関わり楽しむ事で「もういっかい」とリクエストするようになった。繰り返し楽しむ中で、保育士との一対一の関わりから、少しずつ周りにいる友達へ関心が広がり、保育士と同じように友達にしてあげる姿が見られるようになる。
<6月>
・絵本
「どうぶつ こんにちは」:F・ヤールブソワ 案・絵 児島宏子 文

身近にいる動物をはじめ、たくさん出てくる動物に親しみを感じられる絵本である。高月齢児は保育士に「これは」と言葉で尋ね、低月齢児は指をさしてしぐさで聞いてくる姿が見られた。また、この頃動物たちの鳴き声を真似るようになった。かえる→ケロケロ らいおん→ガオー いぬ→ワンワンなど動物と鳴き声が一致するようになり、友達と一緒に言う事で擬声語を更に楽しんでいた。
 
・パペット遊び
簡単な言葉のやり取りを楽しんだ。動物のパペットが登場すると「かえる」「らいおん」と大きな声で言い、パペットが動く様子を見て怖がる子どももなく楽しむ事が出来た。
握手したり触れてみたりとパペットに親しむ事から始めた。パペットの言葉にうなずいたり「はーい」と返事をするなど簡単なやり取りを楽しめるようになった。
<7月>
・絵本
「がたんごとんがたんごとん ざぶんざぶん」:安西水丸 作

繰り返す言葉のリズムが心地よく、言葉を真似て一緒に「がたんごとん…」と言いながら楽しんでいた。様々な物が登場し、子どもたちは絵を指さして「スイカ」「帽子」など知っている物の名前を言葉にし、「もう1回」と言って、何度も繰り返し楽しみ、知らない物も絵本を読むうちに名前を覚えていた。
 
・絵カード
言葉も随分と増え、食べ物の絵カードを見て知っている名前「りんご」「にんじん」「ライオン」など、保育士の言葉を真似て同じように発語しようとしていた。知らない物があると「これなに?」と尋ねる姿も見られ、知らない物の名前も新しく知ろうとする。
日常生活の会話も真似て、おままごと遊びの中で「どうぞ〜」「おいしい」「お茶ください」と友達ちや保育士とのやり取りを楽しむ姿が少しずつ見られるようになる。
<8月>
・絵本
「みっこちゃん」:にしむらあつこ 作

身近な言葉を知る事が出来、普段の生活の中でも同じように絵本に出てくる言葉を話す。給食中には「おいしいねー」、午睡前には「おやすみー」と、簡単な言葉を言ったり会話をしたりする。
 
・歌遊び
「かえるのうた」「おばけなんてないさ」など親しみやすい歌を中心に取り入れた。
カエルの絵を見ると、口々に「かえるのうたが〜」と歌い始め、子どもたちの合唱が始まった。
前回は保育士の歌に合わせて語尾を言っていた子どもたちが、この頃には自分で歌えるようになる。
普段の生活の中でも友達が泣いていると「だいじょうぶ」と声を掛け、ままごと遊びの際には「はいどうぞ」「おかわりください」などやり取りが出来るようになる。
<9月>
・絵本
「おててがでたよ」:林 明子 作

手や足や顔が服から出てくるたびに「おててが、ぱ」と出来た喜びを大いに 感じられる絵本。絵本と同じように着替えの際にタイミングよく「おててが、ぱ」 と声を掛けると楽しんで取り組む姿が見られる。言葉と共に自分で着替えを する意欲も育めたように思う。
 
・ふれあい遊び
友達同士で「おいで〜」と誘い合って膝の上に乗せ“おすわりやす”を楽しんだり、数名で手をつないで簡単な“なべなべそこぬけ”をしたりと、保育士がいなくても数名の友達と共に遊ぶ事が出来るようになる。
また、一度終わるたびに拍手をして喜びを共有する姿も見られ、前回より大きな成長が見られる。保育士の声を聞いて、役割を交代することも少しずつ出来るようになっている。
普段の生活の中では、様々なシーンで同じものを見ると「あ、いっしょやなぁ」などと気付きを発言出来るようになった。
 
<10月>
・絵本
「パンツのはきかた」:岸田今日子作 佐野洋子絵

高月齢児を中心に衣服の着脱など「自分でしてみよう」とする子どもたちが出てきた。この絵本を通して、履き方を丁寧に伝え自分で履く意欲に繋げたいと思い取り入れた。お着替えの時に、子どもたちから「ぶたさんと一緒やなぁ」と絵本の事を思い出して履く姿が見られた。
 
・パペット遊び
6月に遊んだことを覚えていて、ケースから取り出す瞬間から楽しみにしていた。
動物のパペットに「朝ご飯何食べてきたの」と質問されると「パン」「ごはん」と口々に言う。
また、友達の言葉を聞いて「一緒だね」と微笑み「ジュースとパン」や「たまごもたべた」「おいしかった」などと様々な言葉が子どもたちから聞こえてきた。パペットとのやり取りをワクワクしながら楽しんでいる様子が見られ、お片付けの時には「ばいばーい」「またね」と少し残念がる姿もあった。
自由遊びの際には絵本コーナーにてそれぞれお気に入りの絵本を見る事が多くなった。
絵本を開く前には保育士を真似て手遊びを行う。自分なりに話の内容を理解し、出てくる簡単な言葉を発語する姿も見られるようになる。また、友達同士で同じ物を作って遊んだり、一人が作った物を囲んで数名で遊んだりと友達と共に作って遊ぶ楽しさを感じているようであった。
<11月>
・絵本
「きゅきゅきゅ」:林明子 作

絵本を見る時、一緒に「きゅきゅきゅ」と言いながら楽しむ姿が見られる。また給食・おやつ後には、自分で「きゅきゅきゅ」と言いながら口や手を拭いていた。
 
・絵カード
身の回りの絵カードを取り入れた。知っている言葉も随分と増え、絵カードを 見て物の名前を言い、使い方をジェスチャーや言葉で伝えようとしていた。
絵カードを通して、物の使い方や知らない物の名前を新しく知る事が出来た。
ままごとのカバンやお弁当を持って「いってきまーす」「おかいものいくの」と出かけたり、絵本を広げ「これみる」と声を掛けたり、何気ない日常の会話がよく聞かれる。
 
<12月>
・絵本
「あーそーぼ」:やぎゅうまちこ 作

簡単な会話がリズムよく繰り返される楽しい絵本で、子どもたちが毎日のように「よんで」とリクエストする。言葉の意味を知り、絵本の中の質問に答えられるようになるなど成長が見られた。
 
・歌遊び
「あわてんぼうのサンタクロース」や「ジングルベル」など季節の歌を取り入れた。
長い歌であるが子どもたちなりに歌詞を覚えて、部屋に飾っているツリーやトナカイを見ながら楽しむ姿が見られる。また、この頃には保育士のように友達の前に立ち「しあわせならてをたたこう♪」と手遊びを始める事もあり、周りの友達も喜んで参加していた。
生活の中では動物や色の名前が言えるようになり、保育士や友達の服を見て「あか」「しましま」「きょうりゅう」「いっしょやなぁ」と発見を言葉にして伝えられるようになる。
また、周りにも目を向けられるようになり「○○おちてるよ」「おぼうしかぶってないよ」などと教え合う姿が見られ成長を感じた。
<1月>
・絵本
「ありがとう どういたしまして」:おおともやすお 作

絵本の中で様々な動物たちが贈り物をもらっては「ありがとう」「どういたしまして」のやりとりを繰り返す絵本である。読み聞かせの際には動物たちと共に言葉にする姿が見られた。普段の生活の中でも玩具を貸してもらった時、おかわりを入れてもらった時など「ありがとう」と言う事が増えた。
 
・ふれあい遊び
数名から全員で手をつないで楽しむ事が出来る「ひらいたひらいた」や「なべなべそこぬけ」を中心に取り入れた。全員で大きな輪になり、誰も手を離さずに遊びを楽しむ事が出来るようになった。また「お茶を飲みに来てください」では、一人で友達の元に行き、互いに手をつないで体を動かし、役割を交代するという事がスムーズに出来るようになる。
生活の中では友達同士で「○○いく」「いかない、○○するの」「そうなの」などの会話をする姿が 見られるようになる。「○○ちゃんおやすみ」と欠席の友達に気付いたり、「ごはんください」「おしるおかわりください」など自分の意思をはっきりと伝えられるようになる。
<2月>
・絵本
「おおきい ちいさい」:元永定正 作

この絵本を通して大きさの違いが随分わかるようになった。初めは、保育士の言葉を真似て「おおきい。ちいさい。」と一緒に言って楽しんでいたが、日常生活の中においても「○○おおきいね」と会話の中でも話すようになってきた。
 
・パペット遊び
3回目のパペット遊びで、パペットの言葉に耳を傾けるようになった。パペットに「お名前は?」と聞かれ恥ずかしくてなかなか言えない子もいたが、大半の子どもは嬉しそうに元気よく大きな声で言えることが出来ていた。
身近な言葉で「ありがとう」「どういたしまして」「ごめんね」「いいよ」といった言葉をパペットで伝えた。子どもたちは、パペットのやり取りを真剣に見ていた。パペットを通じて言葉の使い方を学んだようである。
 
<3月>
・絵本
「ももんちゃんのかくれんぼ」

みんなで遊ぶ楽しさやかくれんぼの遊びに興味を持ち「もーいいかい」「まーだだよ」の言葉のかけ合いを楽しむ。
子どもたちはももんちゃんと一緒になって鬼になった気分で、どこに隠れているのか探していた。「○○のうしろにいてるよ」など言葉で隠れている場所を伝えた。
 
・絵カード
絵カードを見て、日々の生活の中で使う言葉「おはよう」「ただいま」などを知っている言葉をどんどん発するようになってきた。絵カードを見て、「何してるのかな?」と尋ねると、「寝てる(ねんねしてる)」「泣いてる」と様子を言葉で表現するようになった。また色や形などの区別もつくようになり、自分の服の色と「いっしょ」と言うようになる。
トイレで排泄する際には、友達が先に座っていると「あとでかわってね」「いいよ」など子ども同士で会話する姿が見られる。また昼食時など「○○ちゃんぜんぶたべたね。すごいね」と自ら友達の様子に気付いて褒めたり、それを聞いて「○○もたべてる」など互いに意識し高め合える関係に成長した。
 
〇まとめ
一年を通して、子どもたちの発達状態に合った題材を選ぶようにした。
1歳児は、月齢差や個人差が大きく、どの発達状態の段階に基準をおくべきか悩んだ。
全員が楽しめるものとして、@歌を歌うAふれあい遊びBパペットC絵カードの4項目に加えて、一年間を通して絵本を読み進めてきた。
身の回りの生活用語や身近にある物の名前そして、相手の気持ち、自分の気持ちを言葉で表現する事にも意識し伝えてきた。
また子どもの発した言葉に対して、「そうだね○○だね」と正しい発語をオウム返しして子ども自身が確認と自信を持てるように努めた。
上記の遊びの他にも、リズム遊びの際には「り・ん・ご」「も・も」など馴染みのある物を用いて行う復唱遊びも取り入れて言葉と言葉のもつ“音”を楽しむ事が出来た。
秋頃から低月齢児(特に12月以降生まれ)の子どもたちの言葉が急激に増えた事で、クラスの雰囲気もにぎやかになり、あちらこちらで言葉や子ども同士の会話を耳にする事が出来た。
進級当時に比べて3月頃では、自分の思いを相手に伝えられるようになった。そのため相手を叩いたり噛んだりする行為がずいぶんと減り、落ち着いてきた。玩具の貸し借りなど言葉を使って出来るようになりトラブルも減った。
高月齢児については、相手を思いやる気持ちが芽生え始め、泣いていると「大丈夫」と顔をのぞいたり、欠席している子に気付くと「〇〇ちゃんは来てないね」「ご用事かな」とやり取りをする等優しい気持ちも育まれているようで取り組んできた成果が少しずつ垣間見え嬉しく思う。
今回の取り組みは担任一人ひとりが、子どもたちの日々の成長を見守り、子どもたちを通して学びを高められた一年だったように思う。この貴重な経験を次年度以降に活かしていきたい。