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平成28年度研究記録・・・

平成28年度 かもめ組・4歳児研究発表
テーマ 『砂遊び』
 
■はじめに
日頃より園庭で遊ぶことが好きな子どもたち。園庭の遊びの中でも砂遊びを好んで楽しむ姿が見られたので、“砂遊び”を通して発想力や、造形力、協調性などを身につけられるのではないかと思い研究テーマに選んだ。
一年間を前期(4月〜7月)、中期(8月〜11月)、後期(12月〜3月)に分けて子どもの成長・変化を観察しながら写真に残し、写真の一部を提示して、研究レポートにまとめた。
 
■年間計画
前 期
4月 5月 6月 7月
・団子づくり
・山づくり
・色んな砂で団子づくり
・山づくり、トンネル
・色んな砂で団子づくり
・山づくり、トンネル
・ピカピカ団子づくり
・道づくり
・泥んこ遊び
中 期
8月 9月 10月 11月
・ピカピカ団子づくり
・道づくり
・泥んこ遊び
・物づくり
(自然物使用)
・物づくり
(自然物使用)
・物づくり
(自然物使用)
後 期
12月 1月 2月 3月
・城づくり ・城づくり ・街づくり ・街づくり
 
■前期
□取り組んだ内容
4月 5月
・山づくり ・団子づくり
6月 7月
・色んな砂で団子づくり
・山づくり、トンネル
・ピカピカ団子づくり
・道づくり
・泥んこ遊び(園庭にて全クラスで)
□子どもの様子
<4月>

・初めて皆で山づくりをする。一緒に作るというよりは、“自分自分”となっているため場所の取り合いや思い通りに作れないと、言い合いになったりする子どもたちであった。

・作っていくうちに山が大きくなり、皆で作る楽しさが芽生える。

・手やスコップだけでなく、容器に砂を入れて山にかけていく方法もある事を知らせると取り入れて作り進めていた。

・高さのある山が出来上がり、そこに保育士がカップで型抜きをすると、子どもたちも新たな遊び方に興味を持ち、山にデコレーションする事を楽しんでいた。

 
<5月>

・一人一つの団子を作る。力加減が難しく、力を入れすぎて壊れてしまう子どももいたが、何度も挑戦して夢中で団子を作っていた。

・自ら「出来ない」という子や作ろうとしない子が数名いたが、泥を手に乗せたり、丸めたお団子を保育士からもらうと、作り始める姿が見られた。

・お皿を使い、サラ砂を作って団子にかける子どもが多く、丸めてはサラ砂をかける、という事を繰り返し行う。

 
<6月>

・以前作った山づくりを思い出しながら、保育士の助言なしで、砂を集めて運ぶ人、それを山にかける人、固めていく人に分担し協力して山を作り進めていた。

・トンネルを掘ってみるよう促すと、下に下に掘るため、なかなか前に進まなかった。少し援助すると正面の子どもの掘っていたトンネルと繋がりスコップを触り合ったり手を繋いで喜んでいた。

・お団子づくりでは二色の浜の砂や園庭のサラ砂、石交じりの砂、石のみの砂を用意し行う。普段作る団子と比べながら、「ザラザラして作りにくい」「固まりにくい」「これじゃあ作れない」などと感想を言い合ってサラ砂が一番作りやすいと感じる子どもたちであった。

・丸まった団子を見てサラ砂で作ると表面がつるつるになる事を 発見し感動していた。

 
<7月>

・前回作り置きしていた団子を、ストッキングやジーパンの切れ端を使ってピカピカに磨く。前回置いていた団子が壊れてしまっている子どもは一から作り直していたが、作りやすいサラ砂だけを集めて団子づくりをしていた。

・団子づくりは全体的に上手く、形に出来ていなかった子どもも丸い団子を作りサラ砂をかけて固めていくという事を楽しんでいた。

・ストッキングやジーパンを使ってもすぐにピカピカにはならず、団子が削れて小さくなるような感じであった。

・作り置きしていた団子を磨くよりもその日に作ったものを磨いた方がピカピカに仕上がった。

・初めての道づくりでは、スコップなどで一直線に線を引く事で道に見立てる子どももいたが、中には掘り進め、しっかりとした道を作る子どももいて様々な姿が見られた。

・しっかりと掘り進めることで水を流した時に分かりやすく、それを見て
一直線しか引いていなかった子どもも掘り進めるようになる等、他児から刺激を受けていた。

・作っていくうちに、「ここ繋げよう」「向こうまで道を伸ばそう」等イメージを膨らませて取り組む姿が見られた。

 
 
■中期
□取り組んだ内容
8月 9月
・道づくり
・泥んこ遊び(園庭にて全クラスで)
・物づくり
・自然物使用
10月 11月
・物づくり
・自然物使用
・物づくり
・自然物使用
□子どもの様子
<8月>

・道づくりだけでなく、“道の先は保育園”と考え、保育園づくりを始めたり、“道の横には木を並べよう”と誰かが提案すると、次々と木に見立てたものを作り出す子どもたちであった。

・また道の形を恐竜に見立て、「恐竜ワールドの出来上がり」と言って楽しんだり、山を作りその上に団子を乗せ富士山に見立てる子どももいて、砂遊びを重ねるうちに今までの遊びを組み合わせて楽しむ姿が見られるようになってきた。

 
<9月>

・物づくりでは、初めは型抜きをするだけの子もいたが、遊びが展開していくと、プリンをたくさん並べる、ケーキを二段重ねにして落ちている葉や実をフルーツに見立て飾り付けるなど、色々な物を作るようになる。

・だいたいの子どもが集団で遊ぶ姿が見られ、物づくりをしながら会を楽しんでいた。

・作っているうちに壊れることもあるが“壊れてもまた作れば大丈夫”といった思考で再び作り進めていた。

 
<10月>

・これまでは砂遊びをしていく中で、色々なものを作り出していたが、10月の物作りでは、作り始める前から何を作ろうかと考え、友達と一緒にイメージを共有し、遊び始める姿が見られた。

・ケーキ作りをする子どもたちは、鍋に入れた砂で型を取り、土台の上にお団子を乗せ苺に見立て、上からサラ砂を振って仕上げていた。

・恐竜ゾーンを作る子どもたちがいて、建物を二階建てに作り、窓やドアの部分はスコップで型をつけて見立てたり、煙突にするための枝を探しにいく姿も見られる。そして、ドアの奥には区切られたスペースがあり、葉っぱや石など恐竜の食料をゾーンごとに違いをつけて並べたり、積み重ねたりして楽しむ姿が見られ。

 
<11月>

・自然物にどんぐりを用いる。どんぐりの使用で更にイメージや見立て遊びが膨らみ、ケーキやドーナツに飾るものに使用する子ども、人に見立てバスに乗っている様子を再現する子ども、恐竜の目や手に使う子ども、屋根瓦に見立てる子どもたちであった。

・バス作りをしている子どもは右写真のように両手を合わせて砂を挟みながらバスの形づくりをするなど発想豊かになってきている姿が見られる。

 
 
■後期
□取り組んだ内容
12月 1月
・城づくり(二色の浜の砂浜にて)
・自然物使用
・実施できず
2月 3月
・街づくり(園庭にて)
・自然物使用
・山づくり(砂場にて)
・自然物使用
□子どもの様子
<12月>

・子どもたちにテーマ“城(建物)”を伝え、バケツ・容器・スコップを自由に使って作れるようにした。前回までの“物づくり”で作っていた“ケーキ二段重ね”を同じように作り“二階建てのお家”としていた。

・砂浜の砂は、園庭の砂よりも崩れやすく二段三段に重ねようとすると上手くいかず崩れている子が多くいた。重ねる際には、土台が崩れないように手で押さえながらやってみるよう提案するが、難しいようで保育士の援助が必要だった。

・重ねると崩れるという事がわかると、山のようにして作り直す子や海水を汲みに行って、砂を湿らせてから作る子などそれぞれの工夫が見られた。

・道中に落ち葉があると「飾れる」と拾い集めたり、砂浜の貝殻や海藻なども拾い集め、城に飾り付けする事を楽しんでいた。

・一人で自分だけの城を作る子もいたが、二〜三人で協力して作る子が多く、アイデアを出し合って作り進めていた。

・7、8月に行った“道づくり”も取り入れ、友達が作った城と城を道でつないだり、海に向って道を作ったりと砂浜ならではの遊び方がたくさん見られた。

 
<2月>

・4月から行ってきた砂遊びを全て取り入れ“街づくり”を行う。
園庭の真ん中に四角く線を引いて囲い、「ここがみんなの街になるから、この中に作ってね。」とだけ伝えて始める。

・数人で何を作るか相談してから作り始めたり、作っている子の所に「一緒に作ろう」と入っていったりする姿が見られた。

・城、大きなケーキ、家、店、山などの物を作るのに夢中になり、道を作る子がなかなか現れなかった。保育士が子どもの作っている家の隣に家を作り「そっちの家に遊びに行きたいから道でつなげていい?」と道でつなげると、それを周りで見ていた子が道の存在に気づき、道を作り始めた。

・道も今まではスコップで掘っていくだけだったが、掘った道に木の枝やどんぐりを並べたり、木の枝で線路のようにして道を作ったり、小さなカップの山をたくさん並べてでこぼこの道にしたりと、道一つでもレパートリーが増えていた。

・道が広がると「ここはお店いっぱいにして商店街」「ここは小さな家いっぱいにする」「ここの道の周りには木を植えよう」など遊びが広がっていった。

 
※街の全体写真
<3月>

・年間計画時には考えていなかったが、4月に行った“山づくり”を砂遊びとして一年行ってきて、子どもたちがどのように考えて、協力して作るかを見てみたくなり取り入れた。

・砂を集めて積んでいく子、固めていく子と誰かが担当を決めた訳ではないが、それぞれが分担し作り始めていた。作っていく中で、一人が「トンネルを掘ろう。」と提案すると、他では「葉っぱで飾り付けをしよう。」と様々な形のカップや枝、葉を集めてきて飾り付けが始まる。

・山と山の道を掘ってつなげたり、山の周りを掘って道で囲うようにしたり、お菓子の家に見立てて屋根にドーナツ型を作ったり、葉っぱをチョコレートに見立てて貼り付けたりして楽しんでいた。

・作り進めていく中であちこちでどうするか相談したり、会話を楽しみながら決めていき、友達と協力する姿が多く見られていた。

 
 
■まとめ
一年間を通して子どもたちに様々な砂遊びを提案してきた。普段自由遊びでしか行っていなかった砂遊びをクラスの集団遊びとして取り入れる事で、色んな視点から子どもたちの成長を見る事が出来た。

前期の“山・トンネルづくり”では、始めは個々で頑張って作ろうとしていたが、それでは大きな山にはなっていかない事、それぞれやっている事がバラバラなため上手く作り上げていけない事などに気づき、砂を集める人・砂を運んで山にかける人・固める人と作業を分担して作れるようになった。それでも(自分でやりたい)という気持ちが強く、周りとは関係なく個人プレーをする子、山作りに上手く参加出来ない子がいた。

他にも途中で壊れてしまった時には他人のせいにし、怒ったり、泣いたりと感情をむき出しにしていた子どもたちも、徐々に壊れてもまた頑張って作れば大丈夫、という気持ちの切り替えも出来るようになり心の成長も見られた。
中期の“物づくり”では、定番だったケーキ・山・団子から抜け出し、恐竜・二段ケーキ・木など作る物の幅が子どもたちのアイデアから広がっていった。中期あたりから、子どもたちからの発言や発想がとても豊かになり、目的を持った遊びとしてしっかり取り組めるようになっていた。また個人プレーや参加出来ていなかった子も友達や保育士と一緒に何らかの目的を持って作り進め楽しめるようになった。

後期の“城・街づくり”では、互いに作っているものを見て真似たり、そこから更に自分のアイデアを加えて作ったりするようになる。他児の物が楽しそうであると(一緒にやらせて)と加わり、他児の使っている玩具が欲しい時には(貸して)と順番を待ち、子ども同士の人間(仲間)関係もしっかりと育まれていった。

様々な砂遊びを通して、はじめは予想もつかなった遊びや展開が見られ、また成長も見る事が出来た。