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楽しい遊び
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平成29年度研究記録・・・
平成29年度 あひる組・0歳児 研究発表
テーマ『うた遊び』
〇はじめに
0歳児は、心身ともに大きく成長する大切な時期である。また、乳幼児期は、さまざまな経験や刺激を通して体で覚えていき成長への準備をしていると言われている。担任3人は、保育環境を整え、心(感覚機能)と体(運動機能)の発達をサポートするにはどのような取り組みがよいか意見を出し合った。
ごく自然に楽しい雰囲気の中から保育を進めようという思いで一致した。

そこで心と体を育める取り組みは何かと考えた時、うたを中心に進める事でどちらの要素も取り込め、また発達に繋げていけるのではないかと思い「うた遊び」をテーマにした。
 
主に取り入れた歌・手遊び
4月
5月
6月
7月
8月
9月
10月
11月
12月
1月
2月
3月
ちぃちぃこっことまれ
きゅうりができた
むすんでひらいて
あたまかたひざぽん
おふねがぎっちらこ
げんこつ山のたぬきさん
パン屋さんにお買いもの
大きな栗の木の下で
いとまきまき
だるまさん
手をたたきましょう
なべなべ
ちょっちちょっちあわわ
ぞうきん
一本橋こちょこちょ
三ツ矢サイダー
ぜんぜがのんの
りんごコロコロ
おもちゃのチャチャチャ
 
〇前期(4月〜7月)
4月 ちぃちぃこっことまれ ちょっちちょっちあわわ (発声の訓練)
5月 きゅうりができた (ぞうきん) (バランス感覚)主に低月齢児
6月 むすんでひらいて 一本橋こちょこちょ (手指の訓練) 主に高月齢児
●子どもの姿
4月〜 6月生まれ 4月の時点でおすわり以上の発達がみられた子どもたち4名
8月〜11月生まれ 4月の時点でおすわりが出来ず寝返りやねんねの子どもたち4名
●取り組みの様子・気づき
発声を促すような歌を取り入れた。
体をくすぐり、声を出して笑う事に注目した。
自分で動く事が少ない乳児は、刺激を与えるため「ぞうきん」や「きゅうりができた」を積極的に取り入れバランス感覚や皮膚感覚、リズム感覚を促すようにした。
4月当初は、保育士のする歌や遊びを興味深く目で追い、耳を傾ける様子だけであったが、繰り返す事によって5月頃には(一本橋こちょこちょなど)手や体をくすぐられるタイミングが解り、くすぐられる前に反射的に構えて、くすぐられる事を楽しみに待つ姿が見られる様になった。
信頼関係が深まるに従って子どもたちのくすぐられた時の笑い声が大きくなっていくのも感じた。
また、歌が終わるとパチパチと手をたたいて喜んでいた。
「むすんでひらいて」は、保育士を真似て、歌に合わせ手をグーパーする事や手を振るなどの動作が見られた。
出来ても出来なくても歌い終わると「上手ね〜」と言葉をかけ、拍手で終わる事を心掛けた。
子どもたちが、自ら拍手をするという運動と、歌い終えたという感覚を養う事が出来た。

*またT期には、絵本の「いないいないばぁ」取り入れた。
当初は訊いているだけであったが、読み進めていくうちに子どもたちからページをめくるタイミングで
「ばあ!」 と声を合わせて言えるようになった。
「ばあ!」という発声と記憶の訓練につなげる事が出来た。
〇<U期>7月〜9月
7月 あたまかたひざぽん ちょっちちょっちあわわ (バランス感覚)主に低月齢児
8月 おふねがぎっちらこ ぜんぜがのんの (バランス感覚)主に高月齢児
9月 りんごコロコロ げんこつやまのたぬきさん (手指の訓練) 主に高月齢児

●子どもの姿

4月〜 6月生まれ 7月の時点で伝い歩きやよちよち歩きが見られるようになる
8月〜11月生まれ 7月の時点でお座りやつかまり立ちが見られるようになる
●取り組みの様子・気づき
うた遊びが始まると注目し、歌(おふねがぎっちらこ)に合わせ体を前後左右に動かしたり、両腕や膝でリズムを取るような動き(げんこつ山のたぬきさん・拍手など)をして笑顔で楽しむ様子が増えた。
月齢の低い子どもたちには、自分から動く事がまだまだ難しいので保育士が子どもの後方から手を添えたり、あるいは、保育士の膝の上に座って歌に合わせ体を動かしリズムを感じられるようにした。
あたまかたひざぽんは、保育士が子どもの体に触れ刺激を与えるようにした。
この時期、高月齢児を中心に家具などに隠れて「ぱあぁ〜」と顔をのぞかせる遊びが盛んに見られるようになった。
「いないいないばぁ」遊びに布を取り入れた。
布はオーガニック素材でカラフル(5色)なため、好きな色を選ぶ事や半透明のもので透けて見える事から危険性も少なく、安心感して楽しんでいた。
 
<V期>10月〜12月
10月 おもちゃのチャチャチャ
パン屋さんにお買いもの
◎パィナップル型のマラカス
   ・魚型のカスタネット等木製の楽器の玩具
◎月刊絵本(じゅうじゅうじゅう)にそって
   手作りのマグネット玩具を取り入れた
◎手作りマグネットのパペットを目の高さに
   設置する(付ける・外す・貼る)
(運動機能)
(手指の訓練) 主に高月齢児

11月 大きな栗の木の下で (運動機能)  主に高月齢児
12月 いとまき
◎キーボード使用
◎果物の布製カード使用
(手指の訓練) 主に低月齢児
     
●子どもの姿
4月〜 6月生まれ 10月の時点で言葉の意味を少しずつ理解し始める。
8月〜11月生まれ 10月の時点でよちよち歩きや伝い歩きが見られるようになる。

●取り組みの様子・気づき

8月末にベッドを片づけ9月におままごとコーナーを作った。
この時期、食べ物に興味を持ち始めた子どもたちは、食べる真似が大変盛んになった。
月刊絵本(じゅうじゅうじゅう)を中心に食べ物が載っていると人差し指と親指を使って上手につまんで食べる真似をしたり、玩具の食べ物を「はいどうぞ」と友達に差し出したりとごっこ遊びが始まった。
その姿を見て絵本に類似した玩具があればと思い、フェルト地の温もりのある食べ物を手作りした。
子どもたちは、絵本の中の目玉焼きやフライパンが、立体的なので驚いた表情が印象的だった。
ままごとコーナーとの繋がりで手遊び「パン屋さんにお買いもの」を取り入れた。
パン屋さんにある物を保育士が顔で表現すると子どもたちもそれを真似て楽しんだ。
歌と絵本、玩具を取り入れた事で子どもたちは、食べ物と名前が一致するようになり、「パンを持って来て」「ケーキは?」と問いかけると持って来るようになった。
10月は、パィナップル型のマラカス・魚型のカスタネット等木製の楽器を購入してもらった。
ずっしりと安定感のあるマラカスは、楽しみながら腕の力をつける事に繋がった。
最初は、すぐに疲れて止めていた子どもも慣れるに従って10〜15分と持って鳴らす事が出来た。
保育士が「おもちゃのチャチャチャ」を歌いだすと自らマラカスを取りに行き、歌のリズムに合わせて鳴らしたり、全身を動かしてリズムを取ったりする姿が見られた。
『1歳教育、久保田競』の著書によると、「自分で出した楽器の音に合わせ、体を動かしながら声をだ出すど、2つの動作をする事は創造性を高める事に繋がる。」とあったので積極的に取り入れた。
手作りのパペットは、マグネットを付けて、力を入れないと外せないようにした。
手に付けたパペットを歌に合わせて、踊らせるように動かし、リズムに合わせて口ずさむ子どももいた。
12月には、キーボードを使って生の音楽を取り入れた。
初めはキョトンとした表情でじっと耳を傾けていた子どもたちだったが、音に慣れると保育士の言葉がけやリズムに反応して真似るようになった。
V期の後半は、個々の成長が著しく、クラス全体的に活発な様子が見られ、変化の大きい時期だった。
<W期>1月〜3月
1月 だるまさん
◎ペットボトルのボール落とし
(手指の訓練)主に低月齢児
2月 手をたたきましょう
◎紐通し:手作り電車
◎ダンボール箱のボール落とし
(運動機能) 主に高月齢児
3月 なべなべ  

●子どもの姿

4月〜 6月生まれ 1月の時点で意味をもった言葉を発するようになる
8月〜11月生まれ 1月の時点で安定した歩きが見られ友達を真似るようになる
     
 

●取り組みの様子・気づき

一つ一つの手遊びを見る・聞く・真似る・覚える・動かす等の力が身に付いた。
一人遊びから友達とペアになって手を繋ぎ一緒に遊ぶ姿へと変化した。
友達への関心が高まり関わろうとする姿が増えた。
さらに友達と同じ事をしてみよう・真似ようとする気持ちが見られた。
またそれが出来ると、嬉しそうに笑い合う姿が見られた。
ボール落とし遊びでは、3か所に分けて置いても1か所に集中してしまった。
また、一人がぬいぐるみを持つと次々に持ちたがり、持っていない子がいると「はい」と言って手渡しにいく姿も見られるようになった。
紐をレールに見立てた手作り電車は、男児を中心によく遊んだ。「貨物列車」の歌を保育士が歌うと子どもたちも口ずさむ姿が見られた。
V期で用意した果物の布製カードは、大変よく遊んだ。
保育士が「ぶどうはどれ?」「りんごは?」などと聞くとたくさんの中から探すようになった。また、カードを裏返し「りんごはどれだったかな?」と言うとそのカードを探す子もいた。(記憶の訓練)
〇おわりに
一年間、うた遊びを通して手遊びを中心に取り組んできた。
手遊びの良さは、感覚機能や脳の発達が促される・手先が器用になる・反射機能やリズム感が身に付く・体の動かし方が身に付く(運動機能)・言葉やコミュニケーション力の発達・心の発達に繋がると言われている。
コミュニケーション力の向上には、音楽を聴かせながら一緒に踊る事や、楽器を用いて遊ぶ事で乳児のコミュニケーション能力や社会性も育つ事が期待出来る。
それは、音に合わせる事や相手を見ながら合わせる行動をするだけでもその効果は期待出来るとも言われている。
好きな音楽や心地よい音楽を聴くと扁桃体(喜怒哀楽・食欲・睡眠欲などの本能を司っている)などの血流が変化して、人の情動を動かし感動をもたらし、心も動かす働きがあるとされている。
あひる組の子どもたちの心(感覚機能)と体(運動機能)にも個人差はあるものの成果(成長)が見られたように思う。
4月は、無反応だった子どもたちも、音楽や歌が聞こえてくると耳を傾けるようになった。
そして、歌が始まると手や体を動かし歌うようになった。
また、友達に遊ぼうと誘う姿も見られるようになった。
中でも後半の低月齢児は、成長が早くいつの間にか同じように遊べるようになっていた。
0歳児は、変化が大きく日々成長する時期である。
その時期に応じた玩具を作ろうという思いで多くのものを提供するように取り組んだ。
年間計画のようには時間が取れず不充分ではあったが、提供したものは楽しんで遊ぶ姿が見られた事に喜びを感じた。
この一年で子どもたちは、表情が豊かになり感情を素直に表現する事ができ、友達と一緒に何かをしようとする姿が見られるようになり嬉しく思う。
キーボ−ド等の楽器は、音を感じ体でリズムをとる事ができるため、月齢に関係なく聞かせる事は大切だと思った。
音楽が子どもに与える心の影響は、思いやりの心を育むきっかっけになるという事がこの一年を通して学ぶ事が出来た。 これからも健やかに成長してほしいと願っている。