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平成30年度 研究記録・・・
平成30年度 あひる組・0歳児 研究発表
テーマ『様々な素材に触れる』
〇はじめに
 0歳児は運動能力や視力、聴力などの身体的な発達はもちろんのこと、感覚や感情表現等も、どんどん広がっていく大切な時期である。
一生のうちで、最も著しい発達が見られるこの時期に様々な素材に触れ、感触、感覚の違いを味わう中で、好奇心や想像力、創作力、自主性などの基礎を培っていきたいと思い「様々な素材に触れる」という事をテーマにした。
 
大きく素材のテーマをV期ごとに分けて決め、それぞれの月ごとにちなんだ物で遊ぶ。
T期( 4月〜 7月)
U期( 8月〜11月)
V期(12月〜 3月)
:布
:ビニール・プラスチック
:紙・段ボール
 
   
<取り組んだ活動と子どもの様子>
≪T期≫
○4月 (シフォン布)
 
 0歳児は運動能力や視力、聴力などの身体的な発達はもちろんのこと、感覚や感情表現等も、どんどん広がっていく大切な時期である。
一生のうちで、最も著しい発達が見られるこの時期に様々な素材に触れ、感触、感覚の違いを味わう中で、好奇心や想像力、創作力、自主性などの基礎を培っていきたいと思い「様々な素材に触れる」という事をテーマにした。
 
     
   
〇5月(いないいないばあ玩具・布の玩具)
 
・いないいないばあ玩具
コーナーの仕切りに取り付けた動物の絵の前にカーテンを付け、めくって遊べる玩具を、腹ばいで届く位置と立って届く位置の2か所に設置した。
ほとんどの子どもがまだ腹ばいのため、低い位置の方がよく遊んでいた。
初めはただめくって楽しむだけであったが、段々と「いないいないばあ」の声掛けに合わせてめくる姿も見られるようになってきた。
・布の玩具
サテンの生地とガーゼ生地の2種類の布の中にプチプチ、柔らかいボール、
ビーズの入ったペットボトルを入れた玩具を用意する。
小さい袋に入ったプチプチは持ちやすく感触も面白いのか、握って楽しむ子どもが多かった。ペットボトルが入ったものは振って音が鳴るのを楽しんでいた。
また成長していくにつれ、ただ握ったり振ったりして遊ぶだけではなく
紐を引っ張り、リボンを外して遊ぶ姿も見られるようになった。
〇6月(引っ張る布玩具)
 
・引っ張る布玩具
ベビーベッドの低い位置と壁の高い位置の2か所に玩具を設置する。初めは座ったまま手を伸ばして布を引っ張っていたが、段々とベッドの柵を持ち、立ち上がった状態で遊ぶ姿が見られるようになっていた。また、つかまり立ちが出来るようになってきた子どもは、壁側でも立てる様になり、立った状態で手を伸ばし引っ張って遊ぶ姿も見られた。最後まで伸ばしきると手を叩いて嬉しそうに遊んでいた。
   
・シフォン布
シフォン布を4月よりわらべ歌遊びの際には引き続き使用した。
使うごとに慣れていき、布を見ると笑顔を見せ「ちょうだい」と、手を伸ば
して喜ぶ姿が見られるようになった。
この頃には布を顔に掛けてもらうと嬉しそうにし、泣く子どもはいなく
なっていた。また「いないいないばあ」の掛け声に合わせて自分で布を
取る姿が見られるようになった。
中には、自分で布を被り(いないいないばあ)を楽しむ子どもいた。
〇7月(壁面玩具【磁石】)
 
壁の磁石を利用し、付けたり外したり出来る魚の壁面玩具を設置する。
魚の布は色や素材(伸びやすい布、デコボコした布等)を変え、魚の
中身も(綿、ビニール袋、プチプチ等)違った物を使用した。
壁に海の背景を設置すると目新しさに気付き、自ら触りに行ったりと
すぐに興味を示していた。
腹這いやつかまり立ち、座った状態で遊ぶ子どもが多く、手を伸ばし
て外す遊びを楽しんでいた。外した物を取り付けるという動作は難しそう
だったが、取った魚に触って感触を楽しむ姿も見られた。
魚の大きさや形も様々なものを用意したが、この頃は大きすぎると掴み
辛いのか小さい物や中くらいの物を手にする子どもが多かった。


≪U期≫
〇8月(壁面玩具にスズランテープを垂らす・圧縮袋で透明マット【感触】)
・壁面玩具にスズランテープを垂らす
7月から使用している魚の壁面玩具に、涼しげな色のスズランテープをカーテンの様に取り付ける。
ひらひらと動くスズランテープに興味を持ち、掴んだり引っ張ったり揺らしたりチラっと上へめくってみたりと様々な姿が見られた。
この頃には、スズランテープの上から外した魚を付けたり、スズランテープを避けて魚を付けようとする姿も見られる様になった。
玩具に慣れた頃にはスズランテープを割いて遊ぶ子どももいた。

・圧縮袋で透明マット【感触】
圧縮袋の中に(水・綿・プチプチ・広告・保冷剤)等、様々な素材を入れた感触を楽しめる玩具を用意する。初めの頃は(これは何だろう)と不思議そうな表情を浮かべ、近くに寄って見つめる様子が見られた。
保育教諭が触る姿を真似て少しずつ触れると、にぎにぎと握り様々な素材の感触を楽しんで遊んでいた。
また大きな圧縮袋に水を入れた物では、その上に立って踏んだり座って手で押したり、寝転んでゴロゴロと回ったりと、気持ち良さそうに冷たい水の感触を楽しむ姿も見られた。
 
〇9月(ビニールプールを使用したボールプール)
 
大きなビニールプールや浮き輪を使用したボールプールで遊んだ。
ビニールプールや浮き輪が用意されると、興味津々な表情で周りに集まり触ったり、
自らプールの中に入ろうとする姿も見られた。
プールの中に入るとポンポンと側面を押したり、もたれたり寝転んだりと空気の入ったビニールプールの柔らかさや、跳ね返ってくる感触を楽しみながら遊んでいた。
慣れてくるとプールの中でジャンプをしようとしてふわふわと体が浮く感覚を楽しむ子どももいた。
  
〇10月(スズラントンネル)
 
木のトンネルやフープとマットを組み合わせたトンネルに、数か所スズランテープを付けた。
トンネルに付いたスズランテープに興味はあるものの、最初は普段と違うトンネルの中へ入る事を躊躇する姿が見られた。まず保育教諭がスズランテープの付いたトンネルに入ると子どもたちも少しずつ入っていくようになり、慣れてくるとスズランテープを手で避けながら入ったり、顔に触れても平気で進むなどの様々な姿が見られた。
シャカシャカと鳴る音が楽しい様で、スズランテープを揺らしたり引っ張って取ろうとするなど音と感触を楽しむ姿が見られた。
〇11月(取り出し玩具)
 
ミルク缶を使用した入れ物に、カプセルを出し入れして遊べる玩具を用意した。
様々な素材を使ったカプセルの中には(おはじき・どんぐり・砂)を入れた。
玩具に興味津々で「あ!あ!」と声を出して手を伸ばし、手に取ると喜んで遊ぶ姿が見られた。
プチプチの付いたカプセルでは、見た目や感触が不思議な様子で顔に近づけてじっと見つめたり、保育教諭がプチプチをつぶして音を鳴らすと、不思議そうに真似をして押し潰そうとしていた。
透明のカプセルでは、中に入っている物や揺らした時の中の動きを見つめたり、カプセルを振って色々な音を鳴らしたりと、感触・見た目・音などそれぞれの素材による違いを楽しんでいた。
またミルク缶にカプセルを出し入れして遊び、出来ると保育教諭や他児と目を合わせ、笑顔で手を叩いて喜びを共感し楽しんでいた。

《V期》
〇12月 (段ボールスタンプ・落ち葉遊び)
 
・段ボールスタンプ
スタンプの持ち手の部分は、ガタガタと凹凸のついた物と平らな物と
変化を付けた。形は六角形・三角形・ハート型を準備した。
最初は段ボールスタンプを持ち、興味深く見る子どもたちであったが、
次第に段ボールのガタガタとした凹凸の面に触れたり、平らな面に
触れてみたり手触りの違いを握って確かめる姿も見られた。
六角形のスタンプは、太くて少し握りにくく画用紙に色が付きにくい
ため、スタンプを楽しむというよりは絵の具を付ける事を楽しんでいる
ように見えた。
三角形やハート型は握りやすく綺麗に形がスタンプ出来るため、好んで
手にする事も多かった。最初はなぐり描きのように絵の具を画用紙に付けてしまう子ども多かったが、手を添えて一緒に取り組む事でスタンプになり、綺麗に模様が付くと「あっ」と反応して嬉しそうにする姿が見られた。

・落ち葉遊び
散歩で子どもたちと一緒に拾った落ち葉を使用する。
空のペットボトルに穴を開け、その穴から落ち葉を中にいれて遊ぶ。
部屋にシートを敷き、その上に落ち葉を広げる。
保育教諭がしている様子を見て、
ペットボトルの穴から落ち葉を入れようとする姿が見られる。
落ち葉の感触と足で踏んだり、自分の服の中に入れてみたと、
カシャカシャと音がなる事を楽しんでいる様子も見られた。
上から落ち葉を降らすと、落ちてくる様子を目でしっかりと
追ってみる姿も見られた。


〇1月 (段ボールを使用したポットン落とし・タオル地の動物と絵本)
 
・段ボールを使用したポットン落とし(空の容器)
段ボールに小さい穴、大きめの穴、横長の穴と何種類かの穴を開けた物と、小さめの空の容器
(ヤクルトの容器)を準備した。
最初は容器に興味を示し、中を覗いたり振って遊ぶ様子が見られたが、段ボールが出てくると
自然と穴に入れて落とす姿が見られた。大きい容器を小さい穴に入れようとして入らずに「んー」と声を出して入らない事を保育教諭に伝えたり、無理やり押し込む様子も見られた。
中には入らない事が分かると別の穴に入れ替える子どももいた。横長の穴には容器の向きを変えて落とす様子も見られ、落ちると段ボールの中を覗いたり段ボールを傾けて容器を出そうとする姿も見られた。
・タオル地の動物と絵本
タオル地やフェルトを使用して犬・きりん・ぞうの動物と2種類の絵本風仕掛け遊びを作った。
動物は中に手を入れて動かして遊び、おままごと遊びの時には片手に動物をはめ、近くにある
食べ物を食べさせて遊ぶ様子も見られた。
絵本では指先を使ってポケットになっている部分に、小さな動物をはめて遊んでいた。
 
〇2月 (段ボールを使用したポットン落とし・新聞プール)
 
・新聞プール
大きめのビニールプールの底に圧縮袋に水を入れた物と一人用のタライを用意した。
新聞紙を手渡されると早速破く姿が見られ、中には上手く破る事が出来ず、保育教諭に“破いて”と持ってくる子どももいた。保育教諭が少し切れ目を入れて手渡すと両側に引っ張り破る事が出来た。
「ビリビリ」と声に出しながら破る他児の姿を見て、子どもからも「ビー」と言いながら真似して
破る様子が見られた。また保育教諭が丸めて見せると新聞紙を両手でぎゅっと握り丸めようとした。
ビニールプールが出てくると興味を示し、すぐに入ろうとする子どもが多いが、中に圧縮袋の水が入っている事が分かると入る事を躊躇する姿も見られ、プールの外側から新聞紙を入れて遊んだ。
プールの中に入り圧縮袋の上に座ると、水が動く様子を眺めたり足や手で水を押そうとする姿も見られた。プールの中が新聞紙で一杯になってくると新聞紙の方に意識が向き、全身で豪快に新聞紙に触れて遊んでいた。
・段ボールを使ったポットン落とし(新聞を丸めて作ったボール)
新聞遊びで使用した新聞を丸めてビニールテープを貼り、ボールを作る。
それを以前のポットン落としの本体に落として遊ぶ。
(ボールは大・小あり)ボールは子どもの手で握りやすい大きさと
いう事もあり、落としやすそうにしていた。
小さい穴に大きいボールを押し込む姿も見られたが、入らないと分かると
別の穴を探したり、ボールを小さい物に変える様子も見られた。
手の平でボールをぎゅっと握ったり開いたりと新聞のボールの感触を楽しみ、ボールの新聞を引っ張りだしてちぎったりして楽しむ様子も見られた。
〇3月 (段ボールを使ったポットン落とし)
 
・段ボールのポットン落とし(薄い段ボール)
前回のポットン落としから、落とす物の素材を変えてみた。段ボールを薄く切った物
(薄さは同じだが大きさを大と小の二種類)を準備し、本体の細い穴に入れて落とした。
穴の向きが縦や横と様々だったが自分で方向を調節しながら入れたり、薄い段ボールを
本体に押し当てて、入る穴を探したりと考えながら遊ぶ姿が見られた。
中には、本体の穴を見つけると、その穴に入る段ボールを探して落とす子どももいた。
段ボールは固く、しっかりしている為、薄い板状だったが落としやすそうであった。
時間が経つと、板状の段ボールを並べて遊んだり、足で踏んで感触を確かめる様子も見られた。
・後半はポットン落としの影響からか、普段のお部屋での遊びの際に、棚の丸い穴からチェーン
ブロックを入れて落としたり、大きいボールを入れて遊ぶ姿がよく見られた。
  

〇まとめ
 4月当初は、初めて保護者の元を離れ新しい環境での生活に子どもも保護者も不安一杯で過ごしていた事と思う。
 まずは子どもたちとの関係を作る事を第一に優しく語りかけ、触れ合いを大切に信頼関係がしっかりと築けるように関わった。
その中で4〜7月のT期ではより安心感を与えられるよう“布”を使った遊びや玩具を積極的に取り入れた。中でもシフォン布は、とても柔らかい素材で色もしっかりと付いているので視覚からも入りやすいように感じた。
 また手作り玩具では、様々な素材の布を使用し、入れる物にも変化を付けて音が鳴ったり、握る感触が違う物を取り入れる事で興味を持ち積極的に様々な玩具に触れる事が出来ていた。

 T期に温かみのある“布”を取り入れ、子どもに寄り添いゆっくりと関わる事で信頼関係が生まれて情緒も安定し、よりU期・V期の遊びにも興味を持ち積極的に取り組めたように思う。
 U期ではビニール、プラスチック素材で様々な感触や視覚を通しても楽しめるようにした。
 高月齢児は足で踏んだり、低月齢児は手や顔を付けて触ってみたり、寝転んで体全体で感じたりと色々な姿が見られた。
同じ玩具でもそれぞれの成長にあった遊び方が出来て幅広く楽しめていたように感じた。
 V期の段ボールのポットン落としでは、落とす素材を変えて行ったが変化をつけながら長期にわたり遊びを楽しむ事で成長が感じられた。

 一年間を通して様々な素材の玩具や遊びを準備して提供する事はもちろんの事、その中で「つるつるするね」「ふわふわだね」「カシャカシャ鳴るね」などしっかりと声掛けをしながら関わるようにも心掛けた。 やはり最初は初めて触れるような物には抵抗がある姿も見られたが、保育教諭の声掛けや実際に触って遊んでいる様子を見て、安心し“触れてみよう”とする子どもも多かったように感じた。
 乳児期は“目で見る”“音で感じる”“香りの変化や違い”“触れる”“味わう”と五感を使って遊ぶ中で様々な事を学ぶ。心身共に成長が著しいこの時期に“様々な素材に触れる”という事はとても大切な事だと改めて実感した。乳児期の感触遊びが幼児の泥んこ遊びや水遊び、自然に触れて遊ぶ事などにも繋がり、色々な物に触れる事で好奇心、探求心、想像力なども培われていくと思う。
 この一年の取り組みがしっかりと今後の成長にも繋がってくれる事を願う。